2003 Fiscal Year Annual Research Report
認知的高齢化に伴うエラー反復現象の認知科学的解明:抑制機能低下と二重過程モデルの視点から
Project/Area Number |
15500174
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
原田 悦子 法政大学, 社会学部, 教授 (90217498)
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Keywords | 認知的高齢化 / エラー反復現象 / 二重過程モデル / 漢字選択課題 / 眼球運動 / 系列処理 / 並列処理 |
Research Abstract |
(1)認知的高齢化に伴うエラー反復現象を実験室的に再現するため,大学生を被験者として,カード選択課題ならびに漢字選択課題を二重課題状況で実施する実験を行った.いずれにおいても,エラー率については高齢者群と同程度にまで高くなったが,エラーの反復はやはり再現されたなかった.エラー反復の要因が正答の自明性にある可能性を来年度,検討する予定である. (2)エラー反復現象の要因として,a)複数の反応候補が同一画面上にあり,b)個々の反応候補は単純な内容を持つ,しかし,すべて異なった内容であること,c)相互に異なる内容の中で,特にターゲットと関係の深いディストラクター(ルアー項目)が存在すること,という刺激布置にあると考え,こういった刺激を備えた漢字選択課題における,高齢者群と大学生群の比較実験を行った.正答率および反応時間がルアーとターゲットの相対的な位置条件に依存して,ターゲットの物理的位置の影響を受けることから,系列的処理の発生が考えられ,その検証のために,眼球運動実験を行いつつある.現在までに行った実験(高齢者5名,大学生8名)の結果から,A)4つの反応候補が提示された直後の停留点は,左端ではなくむしろ真ん中の項目に集中している,B)しかしターゲットについて最初の停留直後の停留点は,高齢者群についてのみ左側の2項目が高く,またC)ルアー項目への最初の停留直後の停留点についても,高齢者群のみ左側の2項目が高い,いずれも若年層群は刺激項目位置には依存しないという結果が得られている.すなわち,ターゲットとルアー項日の比較過程に入ると,何らかの系列処理過程が発生しており,とくに高齢者群では左から右への系列処理が発生している可能性が示唆された. 2004年度はさらに眼球運動データについてデータを収集し,系列処理を伴う意思決定過程とエラー反復過程の関係についても検討を加える予定である.
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