2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動依存的可塑性のダイナミクスおよび分子メカニズム
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15500259
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
七五三木 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (20271033)
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Keywords | マスキング / 並列情報処理 / 初期視覚 |
Research Abstract |
単独で呈示した場合は知覚される視覚刺激(ターゲット、T)が、時空間的に近接して別の刺激(マスク、M)を呈示すると、その知覚が著しく妨害され"見えない"あるいは"見えにくくなる"現象を視覚マスキングと呼ぶ。マスキングの時空間特性は、視覚システムが視野内の情報を高速かつ合理的に処理するための機能特性を反映していると考えられる。そこで申請者は、サイン波状に輝度変化するグレーティングパッチ(T)とそれを取り囲むグレーティングアニュラス(M)を刺激としてヒトの心理物理実験を行ない、マスキング効果の刺激図形特徴選択性(グレーティングの方位、空間周波数)およびコントラスト感度を検討した。その結果、(1)TがMに対して同時あるいは150ミリ秒以内で先行して呈示されることでマスキング効果(メタコントラスト)を生じること、(2)TのオンセットからMのオンセットまでの時間差(SOA)に依存して、マスキングを引き起こす条件としてのM刺激の図形特徴選択性や、最適空間周波数、コントラスト感度が変化することが明らかになった。SOAが短い時(0-40ミリ秒)は、図形特徴選択性は高く、最適空間周波数は低く、コントラスト感度は低いが、SOAが長くなるにつれて、図形特徴選択性は低く、最適空間周波数は高く、またコントラスト感度も高くなることがわかった。SOAが長い時のマスキングは、その長い時間差をキャンセルしてT情報に影響を及ぼすMの速い情報が、逆にSOAが短い時のマスキングはMの遅い情報が関与していると考えられる。これらのM情報の2つの成分は、速度、空間周波数選択性、コントラスト感度という観点からみると、サルの初期視覚経路にみられる並列情報処理系の大細胞系および小細胞系の性質とよく対応している。このことから、大細胞系・小細胞系等の視覚情報処理の並列経路間の相互作用が、視覚マスキングに関与する可能性が示唆された。
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