2003 Fiscal Year Annual Research Report
運動学習の初期過程における神経系と筋の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
15500405
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小宮山 伴与志 千葉大学, 教育学部, 教授 (70215408)
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Keywords | 運動習熟 / 単一運動単位 / 単収縮張力 / 運動後 / 運動誘発電位 |
Research Abstract |
【研究目的】平成15年度の研究目的は、運動学習の初期過程における大脳皮質野の興奮性変化と筋の機械的効率変化を運動神経生理学的に検討することである。 【研究方法】 1.被験者は、実験の目的と手順について説明を受け、実験参加の同意を得た健常成人11名(年齢19〜43歳)であった。 2.手指関節の微細な力発揮(最大筋力の5%程度、約1%MVC/sec)による緩徐なランプ型外転運動を実験モデルとした。 3.表面筋電図は第1背側骨間筋(FDI)より表面双曲誘導により導出した。さらに、単一運動単位の活動を記録するために、ワイヤー電極をFDIに挿入した。 4.運動課題の連続的な遂行にともなう主動筋の筋電図量を筋電図の振幅値(RMS)により分析した。また、運動習熟に伴う大脳皮質運動野の興奮性変化を調べるために経頭蓋的磁気刺激(TMS)を被験者の手指支配領域に与え運動誘発電位(MEP)を誘発した。また、運動誘発電位に引き続いて生じる筋電図の消失期間についても解析対象とした。 5.筋の機械的特性は筋内に刺入したワイヤー電極より導出した単一運動単位をトリガーとして、張力信号を平均加算することにより得た(STA法)。 【研究結果】 1.全被験者において、運動課題開始初期には力曲線に周波数の高い不連続な変化が観察され、表面筋電図の振幅変化も大きかった。しかし、課題遂行回数の増大に伴い、力曲線の不連続生が有意に減少し、また筋電図の振幅値も有意に漸減した。 2.一方、大脳皮質運動野の興奮性を示す指標であるMEPや筋電図消失時間には課題回数の増大に伴う変化は観察されなかった。 3.単一運動単位活動記録からは、運動課題初期に増員されていた運動単位の閾値張力が漸増し、課題後半活動参加が消失する運動単位が存在することが明らかとなった。 4.STA法により得られた単一運動単位の単収縮張力を、50回の運動課題遂行前後で比較したところ、運動課題実施後に漸増する例が多数観察された。 【考察】 平成15年度に実施した実験では、運動課題の習熟の初期過程では皮質運動野の興奮性に大きな変化がみられないことを追認した。従って、運動学習の習熟初期の効果には中枢神経系による効果に比して脊髄と筋レベルでの効果が大きく、特に骨格筋の電気的特性と機械的特性の変化が重要な意味を持つものと示唆された。本研究では、STA法による単収縮張力の測定により、運動を反復して行うことにより骨格筋に増強効果が出現し、より少ない運動単位の増員で同一の運動謀題を遂行可能となる可能性が示された。本研究結果から、脳は運動習熟の初期過程で骨格筋に生じる増強効果を読み取り、より効率的に運動単位奪増員し、円滑な運動を行うよう運動プログラムの内容を修正している可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 小宮山伴与志: "人の歩行と相反神経支配"体育の科学. 53・4. 241-247 (2003)
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[Publications] 三田村将史, 他3名: "異なる負荷での反復的な最大ペダリング運動時の運動誘発電位の変化"体力科学. 52・5. 555-564 (2003)
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[Publications] 遠藤隆志, 他3名: "経頭蓋的磁気刺激による60秒間の定常的なペダリング運動時の中枢性疲労の検討"体力科学. 52・5. 565-574 (2003)
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[Publications] 遠藤隆志, 他4名: "鍛錬者と非鍛錬者における持続的な最大筋力発揮中の中枢性および末梢性疲労の発現"体力科学. (印刷中). (2004)
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[Publications] Komiyama, T, Fumoto, M: "Posture- and activity- dependent modulation for visual facilitation of the soleus H-reflex in human subjects"Advances in Exercise and Sports Physiology. (印刷中). (2004)
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[Publications] 小宮山伴与志: "入門運動神経生理学"市村出版(株). 379 (2003)