2004 Fiscal Year Annual Research Report
運動学習の初期過程における神経系と筋の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
15500405
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小宮山 伴与志 千葉大学, 教育学部, 教授 (70215408)
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Keywords | 運動学習 / 運動誘発電位 / 運動単位 / 筋電図 / H反射 / 皮膚反射 |
Research Abstract |
ヒトは日常生活の中で新たな運動を経験し、習得できる高い学習能力を持つ。最初は難しいと感じられる動作でも、それを繰り返し反復練習することにより、自動化された運動として再現することが可能となる。この運動学習の初期効果を運動神経生理学的に考えてみると、脳内の運動プログラム内容の修正、脊髄反射の変化そして骨格筋の機械的特性の変化等が相互作用していると推察できる。そこで、本研究では比較的単純な運動動作の習熟をモデルとし、運動学習の初期過程で生じる大脳皮質運動野、脊髄反射そして筋の機械的特性を総合的に捕らえ、運動学習成立の初期過程に関わる運動神経生理学的なメカニズムを解明することを目的とした。 本研究では健常被験者12名を対象として視標追跡運動法による示指のランプ型運動をくり返し行わせた。そして、運動遂行中に経頭蓋的磁気刺激による誘発電位(MEP)、尺骨神経刺激によるH反射、第二指皮膚刺激による皮膚反射、発揮張力の変化を観察した。spike-triggered averaging法(STA法)を用いて単一運動単位の単収縮張力の変化についても検討を加えた。得られた結果は以下の通りである; 1.運動課題の繰り返しにより、円滑な力発揮が可能となり、同時に背景筋電図量も減少した。一方、同一力レベルで誘発されたMEP、H反射、皮膚反射には1名を除く全被験者で有意な変化は観察されなかった。 2.運動課題の繰り返しにより、51個中30個の単一運動単位で有意な参加閾値張力の上昇、2個の単一運動単位で有意な参加閾値張力の低下が観察された)。 3.2本の針電極により同時記録された振る舞いの異なる2つの運動単位の分析からは、有意な閾値低下が観察されなかった運動単位に発火頻度の上昇は観察されなかった。 4.STA法により得られた単一運動単位(有意な参加閾値張力の上昇が観察されなかった運動単位)の単収縮張力の観察では、運動課題直後に20%以上の上昇を示す運動単位が11個確認された。 本研究で用いた視標追跡運動法によるランプ型運動は、20回前後の繰り返しにより円滑な遂行が可能となった。また、パフォーマンス向上に連動して背景筋電図量の低下が観察されたが、MEP、H反射および皮膚反射には顕著な変化が見られなかった。一方、運動に参加する運動単位の動員数の減少と単収縮張力の増大が観察された。これらの結果は、効率的な運動を獲得する初期課程には運動に参画する運動単位数の変化と個々の運動単位の単収縮力の増強が関与することを強く示唆する。
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Research Products
(6 results)