Research Abstract |
「競技力」という言葉は,わが国のスポーツ界において広く一般に用いられている重要な用語であるにもかかわらず,漠然とした曖昧な解釈を許していると考えられる.しかし,この競技力という言葉は,意識の深層に内在する汎時的な言葉であると見做されるが故に,この深層意識での言葉を一義化して,つまり概念の同一的で不変的な意味を抽出して,その内実に何某かの共通了解を実定させなければ,実際のゲームや指導の場面において,指導者とプレイヤー間のコミュニケーションばかりか,指導者同士あるいは指導者と研究者間の議論を不毛なものへと陥らせてしまうのであり,況やその向上を図ろうとすることなど不可能であろう. そこで,本研究では,可視的で一回性的で多様な表層でのスポーツ現象を支え,それに根拠を与えている不可視の深層での仕組みにこそ共通了解が存在すると仮定し,それを身体性,知性,感性という3つの構成契機から成る「スポーツ構造」という術語でもって捉えることで,「スポーツ構造が競技力を規定する」という独自の命題設定から,バスケットボールの競技特性を規定する普遍的な仕組みの解明を目的とした. この目的を達成するための3年計画の2年目として,今年度は,上述した構成契機の内の知性の中核要因たる戦術について,昨年度紙上発表した「バスケットボール競技のチーム戦術の構造分析」(スポーツ方法学研究,第17巻第1号:平成16年度スポーツ方法学会学会賞受賞)の結果に基づき,わが国のトップレベルに位置する,高校,大学,実業団の各チームを対象に,また,わが国のトップレベルの指導者たちとの研究協議をもとに,実証的研究を行った.そして,そこでの研究の一連の成果として,第16回日本スポーツ方法学会(3月21日,山形大学)において口頭発表を行った. なお,上述したことと併せて,3つ目の構成契機たる「感性」の内容究明に関連するものとして,「バスケットボール指導者のコーチングフィロソフィーに関する研究」を『スポーツコーチング研究』(第2巻第2号)に紙上発表した.
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