2003 Fiscal Year Annual Research Report
上肢屈曲反応動作時の姿勢筋活動に及ぼす運動開始予測と姿勢制御発動準備状態の影響
Project/Area Number |
15500436
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤原 勝夫 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60190089)
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Keywords | 事象関連電位 / 予測的姿勢制御 / 上肢運動 / 筋電図 / オドボール課題 / 立位姿勢 / 反応動作 / 任意タイミング動作 |
Research Abstract |
音標的刺激の確率の異なるオドボール課題と任意タイミングにて、上肢運動を実施し、脳電位のP300振幅と局所筋に対する姿勢筋の活動開始時間差を求め、両者にどのような関係があるかについて検討した。 被験者は19〜36歳(平均23.1±3.9SD)の健康な男子7名と女子8名であった。事象関連電位を記録するための電極は、国際Ten-twenty法に基づいて、記録電極をFz、Cz、Pzに配置し、基準電極を両耳朶に配置した。筋電図は、三角筋前部線維、腹直筋、腸骨稜の高さでの脊柱起立筋(ES)、大腿直筋、大腿二頭筋長頭(BF)、前脛骨筋、腓腹筋(GcM)から導出した。まず、自己ペースでの上肢運動の課題を行った。上肢は可能な限り速く挙上し、重りを約10cm持ち上げ、約2秒間保持した。その後、音刺激によるオドボール課題を用いた上肢運動を自己ペースでの課題と同様の方法にて行った。事象関連脳電位の加算回数は30回とした。音刺激の提示間隔は一定の2.5秒とし、刺激提示確率は45%と15%とした。 P300の振幅は、刺激提示確率15%では45%に比べて有意に大きかった(15%:11.8±7.0μV、45%:3.8±5.2μV、p<0.05)。音刺激から三角筋前部線維の筋活動開始までの反応時間は15%条件に比べ45%条件の方が有意に早かった(p<0.01)。ADに対する姿勢筋の潜時は、全体的に15%条件は任意条件よりも遅く、条件において有意な主効果が認められた(p<0.05)。反応課題の2条件間で比較すると、ESとGcMの筋活動開始は刺激提示確率15%に比べ45%において有意に早く、この反応課題の条件による有意な影響はGcMにおいて著明に認められた(ES, p<0.01,GcM, p<0.001)(図1)。2条件の反応課題におけるP300振幅とADに対する姿勢筋の潜時との相関について、3つの姿勢筋のうち最も早く活動した姿勢筋およびESとの間に有意な負の相関が認められた(最も早い筋r=-0.421,p<0.05,ES r=-0.377,p<0.05)。 先行研究により、標的刺激提示確率が低く、予測がしにくいほどその課題に対する処理資源の分配量が多くなり、結果としてP300の振幅が大きくなると考えられる。本研究のP300振幅の結果より、今回の標的刺激提示確率15%の条件では、標的刺激提示確率45%の条件に比べ予測しにくく、課題に対する処理資源の分配量が多かったものと考えられる。反応時間の結果からも15%条件に比べ45%条件の方が予測しやすかったことが推測され、さらに姿勢筋の先行活動も標的刺激提示確率に有意な同様の影響を受けていた。姿勢筋の先行活動の結果より、予測がしにくいほど体幹に近い部位を予測的姿勢調節の対象とする傾向があると考えられ、また予測がしやすい場合には遠位の下腿部をも予測的姿勢調節の対象とすることが可能となると考えられる。ここでみられた標的刺激提示確率が予測的姿勢調節に及ぼす影響とは、確率が高いほど予測がしやすく、また予測ができているほど課題に対する処理資源の分配量が少なくて済むために、姿勢調節におけるプログラムが早く作動できたと考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Fujiwara, K., Maeda, K., Toyama, H.: "Influence of illusionary position perception on anticipatory postural control associated with arm flexion"J.Electromyogr.Kinesiol. 13. 509-507 (2003)
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[Publications] Fujiwara, K., Toyama, H., Kunita, K.: "Anticipatory activation of postural muscles associated with bilateral arm flexion in subjects with different quiet standing positions"Gait and Posture. 17(3). 254-263 (2003)
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[Publications] Fujiwara, K., Asai, H., Miyaguchi, A., Toyama, H., Kunita, K.: "Perceived standing position after reduction of foot-pressure sensation by cooling the sole"Perceptual and Motor Skills. 96. 381-399 (2003)
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[Publications] Asai, H., Fujiwara, K.: "Perceptibility of large and sequential changes in somatosensory information during leaning forward and backward when standing"Perceptual and Motor Skills. 96. 549-577 (2003)
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[Publications] Fujiwara, K., Kunita, K., Toyama, H.: "Latency of saccadic eye movement during contraction of bilateral and unilateral shoulder girdle elevators"Perceptual and Motor Skills. 96. 173-184 (2003)
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[Publications] 藤原勝夫(分担執筆): "高齢者の姿勢制御(入門運動神経生理学 -ヒトの運動の巧みさを探る-)"市村出版. 379(144-156) (2003)