2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15500476
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大澤 功 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 助教授 (10223786)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
押田 芳治 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (10169295)
|
Keywords | 運動 / 高血圧 / 悪性新生物 / EBM / 臨床疫学 |
Research Abstract |
今年度は,運動あるいは身体活動が高血圧症と悪性新生物(がん)へ及ぼす影響について検討した.2000年から2004年の5年間にMEDLINEに登録されている論文を検索した. 1.高血圧症 介入効果を示すエビデンスとしての質が高いランダム化比較試験(RCT)に絞って検索した.その結果196編がヒットし,アウトカムとして高血圧の罹患,血圧の低下が明確に記載されている論文に限定すると20編となった.この中で収縮期もしくは拡張期血圧が有意に低下していたのは17編であった.また,生活習慣全般ではなく運動単独の介入効果を検討した文献では12編中11編,期間が1年以上の長期にわたる研究では6編中5編で運動の有用性が示された.ただし,他の降圧療法(利尿薬,減塩食)と比較すると運動による降圧効果は弱く,研究対象となった高血圧症もほとんどが軽症例であった. 2.悪性新生物 コホート研究に絞って検索した結果353編がヒットし,さらにアウトカムが悪性新生物による死亡,悪性新生物の罹患が明確に記載されている論文に限定した.死亡への影響を検討した論文は6編あり,5編が有意に死亡の相対危険が減少していた.悪性新生物罹患のリスクは,乳癌と大腸癌でリスク低下を示す論文が多く,前立腺癌,卵巣癌,子宮内膜癌,腎細胞癌,膀胱癌,肺癌では意見が分かれており,非ホジキンリンパ腫と慢性リンパ性白血病ではリスク低下は否定的であった. 悪性新生物への影響は,ランダム化比較試験の実施が困難なため,効果の判定には限界があるが,一部の悪性新生物では身体活動度の高い生活を維持することによって悪性新生物発症の予防が可能と言える.しかし,身体活動度との関連が不明な悪性新生物は多く,検討されている例でも,そのメカニズムは未だによくわかっていない.したがって,今後解明すべき課題は多い.
|