Research Abstract |
トレッドミル運動を用いると同一負荷様式で陸上と水中を比較することは困難である.しかしながらハンドエルゴメーターを用いれば,運動部位が水面上にあるので陸上と水中において同一運動様式,同一負荷強度下での比較が可能となる。本研究では,陸上と水中におけるハンドエルゴメーター運動時の循環器応答,腎機能,心臓自律神経調節について明らかにすることを目的とした.対象は,心疾患,腎疾患系の疾病歴を有していない健康成人男性8名とした.運動強度は,ハンドエルゴメーターを用いて評価した最高酸素摂取量の60%とした.ペダル回転数は,50rpmとした.それぞれ5分間の安静の後,30分間運動を行い,運動終了後,陸上条件は陸上で,水中条件は水中で,立位での回復を30分間行った.測定項目は,酸素摂取量,心拍数,直腸温,体重および尿成分とした.心臓自律神経調節は,運動前の安静,運動後5〜10分及び25〜30分を評価した.水温は30℃,水位は剣状突起の高さとした.酸素摂取量ば,2条件間に有意な差を認めなかった.水中条件における安静,運動時及び回復時心拍数は,陸上条件と比較し有意に低値を示した.同様に水中条件における回復時の直腸温は,有意に低値を示した.水中条件の運動後は,陸上条件と比較し,尿量,電解質排泄量が保たれた,水中条件における回復時LogHFは,陸上条件と比較し有意に高値を示した.以上のことから,水温30℃における同一強度でのハンドエルゴエルゴメーター運動は,水温と静脈環流量の増大などが直腸温の上昇を抑制し,このことが直腸温の回復を促進することが明らかになった.上肢運動による最高酸素摂取量の60%強度の水中運動は,尿量を増加させ,電解質排泄量を保持し,腎の負担が軽滅される可能性が示唆された.水中条件の回復時における心臓迷走神経調節は,陸上条件と比較し早く亢進することが新たに示唆された.
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