Research Abstract |
目的・背景:報告者らは,大規模介入研究により,地域在宅高齢者の血清アルブミンを増加させ低栄養予防に有効な食生活指針を開発した.本研究の目的は先行の介入研究により表出した地域高齢者集団の身体栄養状態の改善が生命予後と活動的余命に及ぼす影響を更なる介入の継続し観察することにある. 対象と方法:対象は,秋田県南外村に在住する66歳以上の地域在宅高齢者全員1427名である.本研究課題の初回調査は2003年7月(以下,2003年調査)に行った.2003年調査は継続介入の効果も評価できるように設計し,医学調査とアンケート調査で構成した.2003年調査には,1316名が参加し参加率は92.2%であった.介入効果の評価変数として,血清アルブミン,ヘモグロビン,血清総コレステロール,HDLコレステロール,15食品群食品摂取頻度,および定期的な運動習慣などを採用した.活動的余命への影響を評価するために,栄養状態改善の進んだ群とそうでない群を設定し,生活機能障害の罹患率の変化を観察比較した. 介入プログラム:1)動物性食品摂取の推進,2)油脂類の摂取の推進,3)運動習慣(自己啓発実践型筋肉トーニング,ストレッチ体操)の推進等を網羅した冊子プログラムの対象者全員配布した.加えて,地域健康学習会(10回,参加数約500名),およびボランティア学習会(12回,同約360名)において,プログラムに沿った実践講習会を実施した. 結果:2002年7月からの1年間の介入効果を1198名で分析した結果,油脂類の摂取頻度と定期的な運動習慣が有意に増加した.肉類と卵類の摂取頻度の増加も認められたが有意ではなかった.血液指標では血清アルブミン,血清総コレステロール,HLDコレステロール,およびヘモグロビンが有意に増加し,総コレステロー/HDLコレステロール比が有意に低下した.1年間の介入でヘモグロビンの増加(維持含む)した群(男性74歳以下N=203)と低下した群(同N=67)で「一人でどこにでも外出できる者」の割合の変化を比較したところ,2002年時では両群に割合の有意差は認められなかったが,2003年時では増加(維持含む)群では0.5%の増加したのに対し,低下群では3.0%の減少が認められ2003年時では両群に有意差が認められた(p=0.011).なお,両群に年齢差はない. 考察:解析対象の血清アルブミンとヘモグロビンの有意な増加と総コレステロール/HDLコレステロール比の有意な低下は,油脂類,卵類,肉類の摂取頻度と定期的な運動習慣の増加による介入効果と考える.さらに,介入により表出した貧血予防効果が,老化に伴う生活機能の低下を遅くらせていることが判明した. 今後の展開:介入を継続し身体栄養改善を進め,生活機能障害の発症予防,すなわち老化遅延に対する栄養改善地域活動の意義を明確にする.
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