Research Abstract |
目的・背景:報告者らは,大規模介入研究により,地域在宅高齢者の血清アルブミンを増加させ低栄養予防に有効な食生活指針を開発した.本研究の目的は先行の介入研究により表出した地域高齢者集団の身体栄養状態の改善が生命予後と活動的余命に及ぼす影響を更なる介入の継続し観察することにある. 対象と方法:対象は,秋田県南外村に在住する67歳以上の地域在宅高齢者全員1312名である.研究課題の本年調査は2003年7〜11月(以下,2003年調査)に行った.2003年調査は継続介入の効果も評価できるように設計し,医学調査とアンケート調査で構成した.2003年調査の医学調査には,866名(参加率66.8%),アンケート調査には1242名(同94.7%)が参加した.介入効果の評価変数として,血清アルブミン,ヘモグロビン,血清総コレステロール,HDLコレステロール,10食品群食品摂取頻度,および定期的な運動習慣などを採用した. 介入プログラム:介入プログラムは,1)動物性食品摂取や油脂類の摂取を強調した食品摂取の多様性を促すプログラム,2)運動習慣(自己啓発実践型の自重を活用した筋肉トーニング,およびストレッチ体操)の推進で構成した冊子プログラム「テイクテン」を用い展開した.介入プログラムは,地域巡回健康学習会(10回,参加数477名,2004年3月末現在),老人クラブ学習会(16回,508名),栄養尾改善講習会(5回,455名),栄養改善地域伝達講習会(50回,859名),および地域ボランティア学習会(9回,同143名)において展開した. 結果:地域全体で,定期的に運動・スポーツ習慣を有するものの割合が21.0%から28.1%へと有意に増加した.さらに,定期的な運動・スポーツ習慣を有する群では,実施頻度が有意に増加した.食品摂取習慣では,肉類ならびに油脂類を2日に一回以上食べる者の割合が有意に増加した.70歳以上の寝たきり高齢者(寝たきり,寝たりおきたり状態)の出現率が,2003年度は男性3.2%,女性5.1%,全体4.3%から2004年度は男性3.1%,女性4.1%,全体3,7%と減少傾向を示した.老研式活動能力指標総合点の2003年から2004年の縦断変化では11.7から11.6と有意な減少が認められなかった. 考察:本研究年度における介入では,運動習慣と食品摂取習慣の改善が認められ,重度生活機能障害者の出現頻度が減少した.地域高齢者全体の生活習慣の改善が生活機能障害のリスクを低減しているのかもしれない. 今後の展開:介入を継続しライフスタイルの改善をすすめ,老化遅延に対する栄養改善地域活動の意義を明確にする.
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