Research Abstract |
目的・背景:報告者らは,大規模介入研究により,地域在宅高齢者の血清アルブミンを増加させ低栄養予防に有効な食生活指針を開発した.本研究の目的は先行の介入研究により表出した地域高齢者集団の身体栄養状態の改善が生命予後と活動的余命に及ぼす影響を更なる介入の継続し観察することにある. 対象と方法:対象は,秋田県南外村に在住する68歳以上の地域在宅高齢者全員1300名である.研究課題の本年調査は2005年7〜11月(以下,2005年調査)に行った.2005年調査は継続介入の効果の評価ができるように設計し,医学調査とアンケート調査で構成した.2005年調査の医学調査には,873名(参加率67.2%),アンケート調査には1167名(同89.8%)が参加した.介入効果の評価変数として,血清アルブミン,ヘモグロビン,血清総コレステロール,HDLコレステロール,10食品群食品摂取頻度,および定期的な運動習慣などを採用した. 介入プログラム:介入プログラムは,1)低栄養予防のため,動物性食品と油脂類の摂取を強調した食品摂取多様性を促すプログラム.2)運動習慣の推進のため,自己啓発実践型の自重を活用した筋肉トーニングとストレッチ体操で構成した「テイクテン(国際生命科学協会健康推進協力センター提供)」プログラム.この両プログラムを用い展開した.2004〜2005年調査までの介入プログラムの実施状況は,地域巡回健康学習会(8回,参加数408名),老人クラブ学習会(10回,同320名),栄養改善講習会(4回,同312名),栄養改善伝達講習会(48回,同835名),および地域ボランティア学習会(10回,同222名)であった. 結果:2003年(本研究開始年)から2005年までの介入により,定期的な運動,スポーツ習慣を有する者の割合が26.5%から38.2%へと有意に増加した.食品摂取習慣では,肉類(男性,女性ともに)と油脂類(女性のみ)の摂取頻度が有意に増加した.介入後2年間において身体栄養指標である血清総コレステロールとHDLコレステロールに有意な低下が認められなかった. 考察:本研究開始後2年間の介入により,介入地域の在宅高齢者の運動習慣と食品摂取習慣に大きな改善が認められた.その結果,先行研究で示されている高齢者の普遍的変化である加齢に伴う血清コレステロールの低下が本研究集団では認められなかった.この変化は介入研究の高齢者集団の老化の遅れを示しているのかもしれない. 今後の展開:さらに介入を継続しライフスタイルと身体栄養状態の改善をすすめ,生活機能障害予防への波及効果を検証し,老化遅延のための地域介入の意義を明確にする.
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