Research Abstract |
I.研究全体の目的は,温暖湿潤な九州・四国・瀬戸内地方に蓄積されてきた気候風土に根ざした住生活力(住生活習慣・住居管理法など)の実態を収集・記録保存し,次世代に受け継ぐために世代間交流の手だてを検討することであり,本年度の課題は,(1)生活力の記録保存,(2)子どもたちの住生活力の実態の把握,(3)その評価であった。 II.具体的には,つぎの調査にとりくんだ。(1)鹿児島県南種子町・大分県姫島村・徳島県出羽島町などで実地調査を実施し,積極的に地域の気候や自然や文化に働きかけて快適な生活を営んできた住生活力の記録保存を行った。(2)大分県内の中学生を対象に,気候・風土に対応した住まい方や住居管理に関する知識・関心の実態と,家庭や地域での親・祖父母世代からの生活様式の伝承の実態について調査した。(3)さらに,前年度につづき,(1)住宅や機器類の進歩普及,(2)ライフスタイルの多様化の状況をふまえて,これからの生活に生かしていく住生活力の内容を整理・評価した。 III.その結果,つぎの点が明らかになった。(1)エアコンはかなり導入されているが,大きな開口部を活用して風通しをはかる,日光を活用する,などの住生活の大切さは受け継がれており,日よけや打ち水など人がかかわる住まい方も健在である。(2)島や山の中学生は,比較的,自然対応の住生活力が高く,とりわけ,3世代居住の中学生では高かった。(3)各戸毎の住生活の技だけではなく,ミセ造りや置き座や縁側や庭先・玄関先を活用して日向ぼっこをしたり夕涼みをするような,地域生活の大切さも評価されている。 IV.次年度は,最終年度でもあり,これらをふまえて,地域対応の住生活の技や地域生活の大切さを伝承していく手だてを具体的に検証したい。
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