Research Abstract |
モデリングを熟知していない中学校第3学年の生徒を対象に,下記のような目標系列で指導内容を構成した。「(1)数学的モデルをつくって考える意味を理解する」「(2)数学的モデリングにおける特定の考え方を獲得する」「(3)多様な考え方を総合的に用いて解決する」。これを基に,グラフ電卓を導入して,全10回にわたる内容系列を開発した。また、授業構成に関しては、「対立-止揚」過程を意図的に設定した授業構成を考え,実施した。具体的には,まず,モデリングの全過程を取り扱い,生徒が部分を考えながら全体を見渡し,全体を考えながら部分を振り返れるように配慮する。ただし,全ての過程を同程度に強調するのではなく,授業のねらいとして設定した鍵となる考えを生徒の討論すべき論点として設定し,教師と生徒,生徒同士のやりとりから,「対立-止揚」過程を通してそれが導かれるような場面設定,発問を考えていく。そして,意図した「対立」へと生徒を追い込むために,教師は,生徒から出された考えに寄り添いながら,その考えを否定する考えを生徒のつぶやきからひろったり,あるいは,教師自身が問いかけていく必要がある。「対立」を集団の中で共通理解できれば,鍵となる考えが,どのような背景からどのように引き出されるのかを理解することが可能になる。ここに,「対立-止揚」過程を集団の中で共有しながら進めていくよさがある。ただし,「対立」を止揚した鍵となる考えについては,期待通りに引き出されるとは限らない。教師と生徒では,現象を見る視点が異なることを受け止め,意図した考えとは異なっても,一つ一つ検討しながら,鍵となる考えへとつながる発問をしていくことが重要である。ただし,これらの結果は,本研究で取り扱った特定の題材において導かれたことであるため,教師の指導力や学級の要因等を考慮に入れながら,別の課題でさらに研究を進めていく必要がある。
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