2003 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本本草学のフィールドノート「採薬記」の基礎的研究
Project/Area Number |
15500662
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 満 明治大学, 文学部, 教授 (10189855)
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Keywords | 採薬記 / 小野蘭山 |
Research Abstract |
本年度は小野蘭山の採薬記を中心に、諸写本の書誌的な調査をおこなった。調査機関は主として国立国会図書館、愛知県西尾市の岩瀬文庫、大阪の武田科学振興財団杏雨書屋、国立公文書館内閣文庫である。調査した小野蘭山「採薬記」写本は、『常野採薬記』12点、『遊毛記』4点、『甲駿豆相採薬記』10点、『駿州勢州志州採薬記』5点、『伊勢採薬記』10点、『紀州採薬記』3点、『駿州勢州採薬記』1点、『上州妙義山並三峯山採薬記』3点の総計47点である。その幾つかについては複写物を入手し、現在これらについて検討中。検討の結果、およそ次の事柄が明らかになった。 天保5年2月7日、火災によって小野恵畝(蘭山嗣子)の居宅(衆芳軒)が類焼したため、蘭山以来の蔵書・物産品が焼失し、蘭山自筆の「採薬記」類もほとんどが失われたはずであるが、調査の結果、『甲駿豆相採薬記』1冊(杏雨書屋[貴132])、『上州妙義山並武州三峯山採薬記』1冊(杏雨書屋[杏3181])の2点が自筆本であることを確認した。また、磯野直秀氏によれば、『房総常州採薬記』1冊(東京国立博物館[和32])も蘭山自筆というが未確認。 諸写本の検討により、現存の蘭山「採薬記」の多くは京都の山本亡羊(蘭山門人)の筆写本の転写であることが判明した。 また、蘭山自筆の『日記』から、蘭山の採薬の意図や幕府との関わりなどを読み解きつつあり、これまでにいくつかの新たな見解を得ているが、今後この見解をより確かなものにしてゆくつもりである。
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