Research Abstract |
本研究の目的は,溶結凝灰岩や溶岩などの火山噴出物を用い,日本列島に発達する数地域の小起伏面についてその形成年代を明らかにし,山地の形成年代や形成直前の古地理を復元することにある.これは,日本列島に展開する地形の中で低地・段丘・丘陵など平野を構成する地形についてはその形成過程がよくわかっているのに対し,山地は侵食域であることを反映して,その形成年代を明らかにする材料が乏しく,平野に比べて編年学的研究が遅れていることを反映している.山地の形成年代や形成時の古地理を明らかにするには,山頂付近に広がる小起伏面や,山地を覆う第三紀〜第四紀前半の火山噴出物基底の年代と,それぞれの形成背景の解明が役立つ.これを踏まえて,阿武隈山地,関東山地を本年度の研究対象地域とした. 阿武隈山地西部は模式的に小起伏面群の発達がよい.これらの細分は小池(1968)により既になされているが,あらためて地形図,空中写真,数値情報を用いてその再検討を行った.また,小起伏面を覆う白河火砕流堆積物とされる火砕流堆積物の分布と分析試料を収集し,その記載岩石学的特性を明らかにした.その結果,従来の研究成果とは異なり,阿武隈山地西部に分布する火砕流堆積物は白河火砕流堆積物とは記載岩石学的特性に相違があることが判明した.このため,4段認められる小起伏面の中で上位から2段目の熊耳面上の火砕流堆積物に対して年代測定を行ったところ,4.82±0.12Ma,4.86±0.12MaのK-Ar年代値を得た.これまでKoike(1969),木村(1994)により本層は白河火砕流堆積物と考えられてきたが,この年代からみて,本層は吉田・高橋(1991)が定義した白河火砕流堆積物ではなく,それよりも古いものと解釈できる.いずれにせよ阿武隈山地西部の小起伏面群に新たな年代を入れることが可能となった.
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