Research Abstract |
本研究では,土壊圏の物質循環に果たす粘土の役割と特性を明らかにするため,実験室レベルで粘土中の水分・塩分移動の集中的なモニタリングシステムの構築を行い,その機構解明を試みる。本年度は,まずアロフェンを多く含む火山灰土である黒ボク土を対象に,水分及び溶質移動実験を行った。まず,水分測定にはTDR水分計,圧力測定にはテンシオメータと圧力変換器,塩分濃度にはTDRあるいは4極塩分センサーを用いた電気伝導度測定,また排出水量を電子天秤を用いて計測する自動観測システムを構築した。そして,撹乱土と不撹乱土カラムを用いて,飽和及び不飽和定常流れの塩分移動態より溶質分散係数を求めた。 撹乱土の黒ボク土を充填した水分飽和カラムでは,流速の増加に伴い分散長λは増加した。団粒構造の発達した黒ボク土では,団粒間の速い流れと団粒内の遅い流れが存在するため,流速が速くなるほど団粒間と団粒内の流速の差が大きくなり,団粒内と団粒間の混合が悪くなるためと考えられた。不飽和状態では,飽和からの水分量の減少に伴い分散長λは減少し,体積含水率θ=0.5-0.6でλ=0.2cm程度で一定となった。これは,水分の減少に伴い,団粒間の水分が減少し,団粒間の速い流れの影響は小さくなり,分散長λは一定値に近づいたと考えられた。 一方,圃場から構造を壊さないように採取した不撹乱土カラムでは,飽和状態の分散長λは数十cmに達し,また分散長λが,測定深さに伴い増加する傾向が見られた。しかし,不飽和状態では,分散長λは大きく減少し,水分量の減少に伴い撹乱土の分散長λに近づいた。これは,撹乱土では植物根や亀裂が飽和状態では流れを支配するのに対し,不飽和状態では,そうした大きな間隙から水分が排出されるためと考えられた。 今までの研究により,分散係数を様々な条件下で測定することは,土中の水分および溶質の流れ形態を明らかにする上で有用であることが示された。
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