2004 Fiscal Year Annual Research Report
南極城で頻発する沿岸海氷および棚氷の大規模流出が示す大気・海洋環境変化の影響
Project/Area Number |
15510015
|
Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
牛尾 収輝 国立極地研究所, 研究教育系, 助手 (50211769)
|
Keywords | 南極 / 海氷 / 年々変化 / 砕氷航行 / 定着氷 / 流氷 / 浮氷舌 / 棚氷 |
Research Abstract |
衛星画像と砕氷航行記録を用いて過去25年間の南極リュツォ・ホルム湾周辺の海氷変動特性を調べた.1997年以降2004年までの近年を含めて,湾内定着氷の大規模な崩壊と流出が頻発している.この沿岸海氷の力学的な安定性への寄与が考えられる,氷厚や氷上積雪深,沖合流氷消長の年々変化を解析した.昭和基地付近の氷上積雪深と海氷流出有無との間に相関が認められたが(少雪期に流出が持続する),この解釈を空間的に拡張するために同湾を毎年航海する観測船「しらせ」の報告書から航路上の積雪深・氷厚・砕氷航行データを抽出し,曇天時の衛星情報の欠損期や衛星情報が不十分な1990年代前・中期の氷状推定を補完した.船上目視による氷厚や積雪深とラミング砕氷の一回当たりの進出距離(日平均値)との間に負の相関が認められ,氷状の年々変化を反映する一つの指標として有効性を見出した.また,海氷流出の前提となる定着氷崩壊の一因として外洋からのうねり進入に着目し,沖合流氷分布の特徴を調べた.秋から冬に北上する流氷縁が,同湾沖ではその周囲より南に窪んだ形状を示すことがある.その窪みの有無を米国立氷センターのデータで調べた結果,海氷流出と氷縁窪みの発現はほぼ同期していることがわかった.以上の結果から,うねりの進入に対して,沖合流氷域が定着氷崩壊を抑制する"防波堤"の役割を果たす可能性が示された. さらに,衛星画像による白瀬氷河浮氷舌の形態特徴から,1950-70年代の約30年間は湾内奥部に至る海氷の広域流出は起こらなかったことが推測されており,定着氷野の安定/不安定モードが数年〜数十年の周期性を持って変動しているという仮説を支持すると解釈された.陸氷である氷河末端の長期変動と海氷消長との関係の理解は棚氷の不安定性の解釈にも有益であり,同湾周辺の大気場変動との関連と合わせて解析する準備を行なった.
|
Research Products
(2 results)