2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平松 幸三 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (70026293)
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Keywords | 環境破壊 / 航空機騒音 / ライフヒストリ |
Research Abstract |
環境破壊があったとき、地域住民はどのようにそれに抵抗し、あるいは受容するのかに関して地域研究的実態調査を実施した。具体的には、沖縄県北谷町砂辺地区をフィールドとして、嘉手納飛行場を離着陸する航空機の激甚な騒音による音環境の破壊に対して地域住民の受容と抵抗の実態をコミュニティライフヒストリ調査法によって明らかにすべく調査を行った。すでに終了している航空機騒音の影響に関する疫学調査結果と関連させて地域住民(複数)の生活史を解析した。また地域の郷土史資料を渉猟し、かつ地域住民のライフヒストリを聞き取った。防衛施設庁が支援する「まちづくり支援事業」が砂辺区で進展しつつあるが、受容と抵抗の間で意見が分かれるので、今後の展開を注目したい。砂辺区の住民は、嘉手納飛行場周辺においても最激甚な航空機騒音に曝露されているため、集落の世帯数が過去40年間に半減し、今も減少が続いており、これを留めるための方策も模索されている。転出しない世帯は航空機騒音を日常的に聞いているという意味では、外形的には公害を受容していることとなるが、一方、転出しないこと自体が防衛施設庁にとっては抵抗になり、さらに航空機騒音の差し止めを求める訴訟によって抵抗運動を継続していることとなる。「成田空港において供用が開始された暫定滑走路周辺において騒音の影響に関する質問紙調査を実施した。供用開始後航空機騒音曝露の指標として利用されているWECPNLの計算方法に問題があることを指摘した。騒音影響調査の結果を解析して。これらの地域研究結果を解析して、住民の環境破壊に対する受容の様相と抵抗のあり方を考究した。航空機騒音に対する裁判闘争の経緯を調査し、司法の場における、航空機騒音による環境破壊に対する議論と裁判所の判断を調べた。これは環境破壊に対する抵抗運動として現代の日本ではもっとも激しいもののひとつと位置づけることができる。
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