2004 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質による肝薬物代謝酵素誘導が子宮癌発生に及ぼす影響について
Project/Area Number |
15510063
|
Research Institution | Sasaki Institute |
Principal Investigator |
吉田 緑 財団法人 佐々木研究所, 病理部, 研究員 (70201861)
|
Keywords | 薬物代謝酵素 / 子宮癌 / ラット / エストロゲン代謝 / 肝臓 / indole-3-carbinol |
Research Abstract |
本研究は、化学物質による肝薬物代謝酵素誘導がエストロゲン代謝を変化させた結果として二次的に、ラット子宮内膜腺癌発生に与える影響について検索することを目的として実施した。 平成15年度の研究において、生体にエストロゲン作用を示さず、またエストロゲン代謝にかかわる肝臓中の第一相の薬物代謝酵素であるcytochrome P450(P450s)を誘導する物質としてブロッコリーやキャベツに含まれるindole-3-carbinol(I3C)を選択し、子宮癌好発系であるDonryuラットを用いた二段階子宮発癌モデルを用いてI3Cの子宮癌修飾作用を検討した。その結果、I3Cは子宮癌の発生頻度および腫瘍性病変数を有意に増加させたことから、I3Cはラット子宮癌に対して促進的に働くことが明らかになった。また、陽性対照として検索したエストロゲンの代謝物でエストロゲンより強い発がん作用を有する4-hydroxyestradiol(4HE)を同様に検索した結果、子宮癌の発生頻度および腫瘍性病変数を有意に増加し、4HEもラット子宮癌に対して促進作用を有することが明らかとなった。また昨年度は、同実験でI3C投与群の肝臓中のエストロゲン代謝酵素を測定したところ、2-hydroxyestradiolおよび4HEへと代謝する2-および4-hydroxylaseの活性値が上昇しており、特に後者の増加が顕著であったことから、I3C投与により4HEへの代謝が亢進していることから示唆された。 本年度は同発がん実験で得られた臓器・組織を用いて、肝臓および子宮中におけるP450sの発現の変化をmRNAで検索したところ、I3C投与により肝臓中のCYP1A1および1A2が明らかに増加しており、子宮においても1A2の増加が著しかった。また、興味ある事実としてヒトにおいて4HEへの代謝にかかわる重要な酵素として注目されているCYP1B1が肝臓において明らかに増加していた。しかし、子宮における発現には差は認められなかった。また、エスロゲン代謝にかかわるCYP3A1,3A2は、肝臓においては対照群を含むいずれの群にも同様に発現していたが、子宮における発現はいずれの群においても明らかではなかった。 平成15年および16年にわたる本研究の結果、エストロゲン作用のないI3Cがラットの子宮癌を促進し、同時に肝薬物代謝酵素P450sの誘導を介して強い発癌作用を示す4HEを産生するエストロゲン代謝酵素が増加することが明らかとなった。これらの結果は、直接エストロゲン作用を持たない化学物質であっても肝臓の薬物代謝酵素誘導を介してエストロゲン代謝を変調させた結果、子宮癌の発生を修飾する可能性を示している。肝臓の薬物代謝酵素誘導が及ぼす生体影響の検索には、関連臓器を含めた幅広い臓器の解析が必要であると結論した。
|
Research Products
(6 results)