Research Abstract |
「小繰り返し地震(相似地震)は,プレート境界の準静的すべり域に囲まれた小さなアスペリティ(地震性領域)の繰り返し破壊によって生じており,小繰り返し地震の積算すべりを求めれば,そのまわりの準静的すべりをモニターできる」,というのが,これまでの小繰り返し地震による準静的すべりの推定の前提であった.本年度は,このような前提が正しいかどうかの検証を行った. まず,大地震の余効すべり域中の小さなアスペリティの繰り返し破壊を,速度-状態依存摩擦構成則を用いた数値シミュレーションにより再現する事を試みた.得られた結果では,小アスペリティの積算すべりは,まさしく,そこに小アスペリティが無かった場合の積算すべりに一致した.一方,非常に大きな余効すべりのときは,小アスペリティで発生する地震の発生間隔が短くなりすぎ,断層の強度が十分回復しないうちに強制的に滑らされることになるため,普段より低周波のイベントやスローイベントが生じやすいことが明らかになった.このことは,大アスペリティの破壊直後にはその近傍の小繰り返し地震から推定される積算すべりは,その周りの準静的すべりよりも小さくなる危険性を示している. また,一つの小繰り返し地震グループと同定されていても,実際には複数の小アスペリティの複合破壊であり,毎回,完全には同じ組み合わせで滑らない場合もありうると以前から危惧されていた.2005年8月16日に宮城県沖で発生したM7.2の地震は,1978年の地震時に破壊されたアスペリティ群の一部のみを破壊したことが明らかになり,このような現象が小規模で生じている可能性が高くなった.そこで,波形の相似性を利用した高精度の相対震源決定を行い,プレート境界で毎回どのような破壊が生じているのかを検証する解析に着手した.
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