Research Abstract |
地衣類は,ある特定の地衣菌と地衣藻が共生した複合生物であるが,地衣菌を単離培養することにより本来の地衣成分とは異なる二次代謝物を生産することがある.従って,地衣菌の単離培養は新たな薬用資源になりうる可能性があると考えられる.そこで,昨年度,屋久島など各地で採集した地衣類から胞子由来の地衣菌を単離培養し,その成分検索を行った. Graphis proserpens Vain.の地衣菌をMY寒天培地上で培養し,多様な11種の代謝物を単離した.そのうち既知化合物として,3,5-dihydroxyphthalic acid,3,5-dihydroxy-1-phthalic acid methyl ester,2,6-hydroxybenzoic acid,6,8-dihydroxy-3-hydroxymethylisocoumarin, cis-4,6-dihydroxymellein,5,7-dihydroxy -3-(1-hydroxyethyl)phthalide を得た.また新規化合物として,6-hydroxy-3-hydroxymethyl-8-methoxyiso-coumarin,3,4-dihydro-4,6,8-trihydroxy-3-methylene-isocoumarin,5-hydroxy-3-(1-hydroxyethyl)-7-methoxy-phthalideを単離し,構造決定した.さらに3種の代謝物を得たが,いずれもnaphthopyrone誘導体が酸化的に環開裂したユニークな新規骨格を有する化合物であることを明らかにした.これ以外の菌株にっいても新規物質の存在が確認されており,現在構造決定を行っている.このように地衣菌の単離培養が新規有用物質探索の資源として有用であることが再確認された.しかし,培養地衣菌を寒天培地から液体培地へ移し,代謝物を生産させる試みは現在までのところ成功しておらず,現在検討を続けている.
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