2004 Fiscal Year Annual Research Report
西太平洋地域の干潟に生息する巻貝類とそれに寄生するセルカリア類の現状と保全
Project/Area Number |
15510192
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
原田 正和 香川大学, 医学部, 助手 (90127580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村主 節雄 香川大学, 医学部, 助教授 (00032897)
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Keywords | 干潟 / 巻貝 / セルカリア / タイ / 吸虫 |
Research Abstract |
日本国内の干潟に生息する巻貝類のセルカリア感染状況をさらに調査するため、三浦半島8地点、浜名湖周辺2地点、豊田市1地点、徳島県2地点、沖縄県2地点、広島県1地点、岡山県6地点において巻貝類を採集し、セルカリアの種類と寄生率を記録した。ヘナタリは沖縄県、徳島県の各2地点でのみ見つかり、三浦半島、浜名湖ではホソウミニナ、豊田市ではウミニナが採集された。岡山県ではホソウミニナ、フトヘナタリが見つかったが、笠岡湾ではヘナタリ、ウミニナの死骸が数多く見られるので、かつては笠岡湾はヘナタリにとって好適な生息地だったと思われた。沖縄県の干潟では貝類の種類が最も多かったが、セルカリア感染率は低かった。今年度調査した地点ではセルカリア感染率は概ね低かったが、三浦市の4地点では7.3-45%と高く、2種類または3種類のセルカリアが寄生していた。また、徳島県の那佐湾ではヘナタリから特異なセルカリアが検出された。 国外ではタイ南部の調査が不十分だった事と津波の影響を調査するため、タイ南部81地点で調査を行なった。主にCerithidea属各種のセルカリア感染率を調べ、19地点の巻貝類からセルカリアが検出された。タイ南部には東部より2種類多い7種類のCerithidea属の貝が生息しており、同時に5種類が生息している地点もあった。本属の貝類では一般にヘナタリのセルカリア感染率が最も高いが、プーケットタウンのマングローブ育生センターでは、カワアイの感染率が非常に高かった。この地点は人工的な植林地にもかかわらず、セルカリアの多様性はこれまで調査したタイの干潟、マングローブ森の中で最も高く、セルカリア群集保全を考える上で重要な地点であると思われる。2004年12月の津波の被害を受けた東岸の2地点を2005年1月に調査したが、2004年2月と比べて、1地点ではC.obtusaが消滅していたが、セルカリア感染率と多様性に有意な変化は見られなかった。この貝の生息場所は主に植物の茎や葉(数十cmまで)なので、津波によりこの地点の草本類がすべてなくなった事が本種が見つからなかった原因と思われる。津波により破壊された干潟、マングローブ生態系が今後どの程度回復するかは明らかでない。
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