2003 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における19世紀から20世紀にかけてのNew Womanの表象について
Project/Area Number |
15510225
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中川 優子 立命館大学, 文学部, 教授 (70217686)
|
Keywords | New Woman / ジェンダー / Henry James / The Bostonians / Constance Fenimore Woolson / 19世紀アメリカ / フェミニズム / アメリカ文学 |
Research Abstract |
今年度は評論などよりNew Womanについての一般論をまとめることに重きをおいた。New Womanはあくまでも現実よりもその時代のジェンダーをめぐるdiscourseの産物である。その特徴として、自立、高度教育、婦人参政権の要求などがあげられるが、New Womanとみなされる女性がすべてそうだといえないのは、その表象に政治的な意味づけがなされてきたからといえる。例えばNew Womanの第一世代は女性の権利拡大を要求しながらも、自らの「女らしさ」とくに「女らしい愛情」に基づく「家庭」を重視し、その連帯が描かれたが、第2世代では、19世紀末よりとくに性科学、ダーウィンやフロイトの影響をうけ、そのセクシュアリティに焦点があてられた。結果としてNew Womanは"free love"を肯定、すなわち結婚制度を否定する女性として社会秩序への脅威とみなされるようになった。これは激動期のジェンダー変革に対する社会の抵抗とみなすことができるであろう。 実際のNew Womanの表象としてConstance Fenimore Woolsonの短編やHenry JamesのThe Bostoniansなどを考察した。Woolsonの女性主人公たちは、才能があるにもかかわらず、「女らしさ」にしばられ、芸術家としての道をあきらめるが、これは作家として自活していたWoolsonにしてはあいまいな結末といえる。一方でJamesはOlive Chancellorに婦人参政権運動に参加するというNew Womanの第一世代的な特徴を付与しておきながら、レズビアン的な側面を描き、"morbid"とみせることで、第2世代的な特質を与えてモダニスト達に先んじたといえる。またマイクロフィルムよりこの作品の連載されたThe Century Magazineでは南北戦争を振り返る特集が続いていたことを確認した。そのようなコンテキストでのNew Womanの意義の考察も必要だと思われる。
|