2004 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における19世紀から20世紀にかけてのNew Womanの表象について
Project/Area Number |
15510225
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中川 優子 立命館大学, 文学部, 教授 (70217686)
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Keywords | New Woman / ジェンダー / Henry James / The Bostonians / Constance Fenimore Woolson / "In Sloane Street" / 女性作家 / アメリカ文学 |
Research Abstract |
今年度は女性作家のConstance Fenimore Woolsonの作品における女性の表象をとりあげた。WoolsonはHenry Jamesに、伝統的な「女性らしさ」で、つまり典型的な女性作家流に作品を描いたと書評"Miss Woolson"で批判されたが、作品の創作によって自己主張をし、文学界へ進出して経済的に自立していたという点ではNew Womanのprototypeに近い。そこで彼女の作品"In Sloane Street"(1892)を、「女性と文学」という観点で、Jamesの"The Lesson of the Master"と比較研究した。Woolsonの作品の主人公Gertrudeは結婚をせず、自立しており、文学への造詣が深い。Jamesが示す「女性は文学を理解できない」という主張に疑問を投げかける存在である。その点でこの作品はJamesへの反論だといえる。ただしそんなGertrudeでさえ、周囲には理解されず、男性作家の女性蔑視の発言には沈黙するしかない。また彼女自身、「女らしさ」にがんじがらめになっているようで、そのジレンマは、奔放でNew Womanのように生きたMarie Bashkirtseffと家族のために身を削って創作したLouisa May Alcottという二人の正反対の女性作家への思いに反映されている。これはまたWoolson自身のジレンマでもあった。そしてそんな中での女性の社会進出、とくに文学界への進出に対する世間の批判をWoolsonがかなり意識していたことを、ニューヨークで閲覧したClare BenedictによるFive Generationsの第2巻に掲載されたWoolsonの書簡やメモで確認できた。 またHenry JamesのThe BostoniansにおけるNew Womanをも考察した。アメリカの女性権利拡大運動家たちの資料を調べていくと、Victoria Woodhullを彷彿とさせる場面がThe Bostonianasでは非常に多いことが印象づけられた。催眠術やいかがわしさのみではなく、セクシュアリティがとくに注目される。それが女性の権利主張と一体化されている点について、今後さらに考察する予定である。
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Research Products
(1 results)