2005 Fiscal Year Annual Research Report
非主我的愛の成立基盤としての修道院霊性に関する研究
Project/Area Number |
15520004
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑原 直己 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (20178156)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 学 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (80231843)
|
Keywords | 愛 / 修道生活 / ペラギウス / 隠修士 / 共住修道院 / ニケタス・ステタトス / 東方修道制 / 神化 |
Research Abstract |
桑原は、16年度の研究において東方修道制における倫理的な問題にまで拡げた視点についてまとめると共に、改めて東西を含めた修道院霊性に関する通史的な展望を跡づけ、トマスを中心とする西方中世における托鉢修道会の背景と意義を位置づけ直す視点を切りひらくことを目指した。まず、ペラギウス論争についての論考において、この論争が東西キリスト教の神学および霊性におけるパラダイムの分かれ目として有していた意義について指摘した。また、7月にメルボルンで開催された環太平洋西岸教父学会では、ニケタス・ステタトスにおいて東方的な修道霊性の特色を明らかにする発表を行い、16年に東方キリスト教学会で発表した論文にさらに西方的な霊性との対比と日本における東方キリスト教についての研究状況についての振り返りの視点を付加した。さらに、修道制の歴史の原初にまで遡り、修道生活における独住と共住という生活様式の相違が持つ意味を、独住の隠修士の理想像として伝えられてきたアントニオスと、共住修道院の確立者であるバシレイオスにおいて検討した。隠修士の伝統は、東方のみならず西方にも一定の影響を及ぼし、バシレイオス的な共住修道制を引きついで西方の中世前半までを支配したベネディクト会系の修道パラダイムに対する変革としての托鉢修道会の成立に一定の前史をなしていたことが示唆された。さらに、東西を含めた修道院霊性に関する通史的な展望を開くために、筑波大学においてキリスト教に関心を有する大学院生および学生を対象に、毎週授業外に研究会を開催した。夏には、学術振興会研究員の中西恭子氏を招いて、初期修道制に関して講演を求め、また、研究の相互交流を行った。個別論文に収めきれなかった修道院霊性に関する通史的な展望については、最終的に研究成果報告書において示す予定である。秋山は、ハンガリーにおける修道制の歴史について、現地に赴いて調査、研究を進めた。
|
Research Products
(5 results)