2004 Fiscal Year Annual Research Report
倫理学と想像界--<制度化された母性>から<母の領域>へ
Project/Area Number |
15520011
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
金井 淑子 国立大学法人横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (50152773)
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Keywords | 親密圏 / イマジナリーな領域 / 母 / 母性 / 家族 / 身体 / ジェンダー / セクシュアリティ / 差異 / 同一性 / 公的領域 / 私的領域 |
Research Abstract |
本研究の課題は、「母性」のテーマへの本質主義と構築主義の二つの立場、すなわち倫理学からは本質主義に、フェミニズムからは構築主義のアプローチに傾きがちな議論の、それぞれの問題・課題を整理することにある。家族や母性を中心的課題にする本研究において、個人主義・自由主義と共同対倫理の対立構図を超え出る倫理的其軸を「課題としての家族」「新しい親密圏」「<制度化された母性>からく母の領域>へ」という課題設定のもとに考察することによって、換言すれば、フェミニズムの理論的格闘が切り開きつつある問題意識を介在させることによって、倫理学の領域に人間存在の共同性への新たな視点を提示することを目指すものである。 研究成果発表は、主要には、岩波書店刊『応用倫理学講義』シリーズ全7巻の編集への参画と、責任編集巻の第5巻『性/愛』の「講義の七日間」の執筆担当部分には反映しえたと考えている。「リベラリズムとパターナリズムのはざまで」、自己決定やケアの倫理、母の領域と、そこにある世話労働の意味、イマジナリーな領域と自由、等々のテーマを、現代のアクチュアルな問題状況への臨床的なまなざしを通して問題提起した本書は、すでに研究会やいくつかの書評等の場面で取り上げられ、研究代表者は、そこからまた本研究遂行にとっていくつかの重要な示唆深い課題を受け止めている。 さらに東進堂刊『社会学のアクチュアリティ:批評と創造シリーズ』全12巻の第12巻『社会抗争の可能性 差異の承認を求めて』の分担執筆「フェミニズムのめざす社会」(未刊)にも本研究の成果は反映されている。 なお、本研究が目的とした主題は、前記の著書に引き続いて、17年8月刊の予定で進行中の『ジェンダー・身体・政策』(仮題)において、「母の領域」と「倫理学と想像界」の課題設定に託した問題意識の具体化をはからんとしている。
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Research Products
(3 results)