2004 Fiscal Year Annual Research Report
人間と自然・本性のダイナミズム-東方・ギリシア教父の倫理学的総合研究-
Project/Area Number |
15520019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 隆一郎 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60128048)
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Keywords | 教父 / 証聖者マクシモス / 徳(アレテー) / 自然・本性 / 神の似像 / 受肉 / 神化 / 自己 |
Research Abstract |
本研究は西洋思想の源流に位置する東方・ギリシア教父の伝統の集大成者として,とくに証聖者マクシモス(580頃-662)を取り上げ,その歴史的かつ本質的な総合研究を志向するものである。 マクシモスはカッパドキアの教父たち(バシレイオス,ナジアンゾスのグレゴリオス,及びニュッサのグレゴリオス)や,ディオニュシオス・アレオパギテースの哲学・神学を継承し,又,カルケドン信経(451)の精神を受けとめつつ,人間と自然・本性を無限なる神性(善性)へと披かれた徹底した動的な構造のもとに捉えた。そして,存在,知,善,意志,人間の根本的な意味を存在論的ダイナミズムともいうべき文脈の中で捉え,その哲学,倫理学的な意味射程を明らかにしたのである。そこにあって,いわゆる神のロゴスの受肉の問題は単に狭いドグマの問題であることを超えて,人間・自己の成立の根拠に関わるものとして捉え直され,徳(アレテー)はロゴスの現成のダイナミズムを担うものとなる。そうした根本構造をマクシモスの主要著作の読解を通して吟味し,論として展開した点に本研究の特色がある。倫理学的総合研究と称するゆえんであるが,それは今日の哲学,倫理学における状況に対して,そこに用いられている根源語・概念を新たな角度から根本的に捉え直す契機を与えるものともなるであろう。
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Research Products
(4 results)