2003 Fiscal Year Annual Research Report
西田哲学およびバルト神学の継承者としての滝沢克己の思想の総合的研究
Project/Area Number |
15520033
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
富吉 建周 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (60069515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 秀憲 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (60207769)
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Keywords | 哲学と神学の間 / 創造者即被造物 / 仏教とキリスト教との対話 / 近代精神と近代主義 / デカルトとサルトル / 西田哲学とバルト神学 / ヘーゲルとピエティスムス / 滝沢克己におけるヘーゲル |
Research Abstract |
1.滝沢克己の生涯に関する調査について:平成15年8月20日〜同23日、九州大学にて、その学生時代および教官時代の調査を行い、その成績原簿、卒業論文の題目(不明)、勤務に関する記録等を確認できた。9月4日〜同7日東京大学にて資料を確認し、一高同窓会にて寮関係の資料を購入した。また滝沢克己の姪と甥に面接して聞き取り調査をおこなった。平成16年3月2日〜同4日まで山口大学及び鳳陽会にて山口高商教官時代の調査を行った。 2.滝沢克己の中期思想の解明について:初期を代表する『西田哲学の根本問題』(1936年)及び『カール・バルト研究』(1941年)にて、初期滝沢哲学の輪郭を確認し、中期滝沢哲学の成立に深く関係する『平和はどこから来るか』(1949年)、その内容は実存哲学と史的唯物論との批判とその和解の可能性をバルト神学、西田哲学および聖書の研究を背景にして論じたもの、を読み込み、文字通り滝沢哲学を確立した『現代哲学の課題』(1950年)に至るまでを考察した。 3.滝沢克己のデカルト哲学・サルトル哲学の研究について:『平和はどこから来るか』にて実存哲学がとりあげられたが、中期滝沢克己哲学の確立に大きく寄与をなしたのはデカルト哲学研究である。『デカルト「省察録」研究(上)』(1950年)及び『同(中)』(1951年)は画期的なその注釈書である。「近代精神と近代主義」(1950年)にはデカルト哲学研究のエッセンスが述べられている。J.-P.サルトルの《L'etre et le neant》の研究は1951年の初めから始められた。同年の秋の学会では「二つのヒューマニズムと今日の日本」という講演でその成果を披露している。同じ頃スピノザ哲学の研究も始まる。 4.滝沢克己のカント哲学・ヘーゲル哲学の研究について:滝沢克己の主要著作を通読し、カントやヘーゲルに関する叙述の箇所をカードに整理し、以降の研究の下準備とした。 5.K.バルトに大きな宗教的影響を与えたブルームハルト親子の思想について(特にピエティスムスとの関連で):必ずしもブルームハルト親子はピエティスムスに積極的な評価は与えていない。しかし有限者における絶対者の現象という精神性において彼らは明らかにヴュルテンベルクのピエティスムスの影響を受けている。このヴュルテンベルクの宗教性を論文「ヴュルテンベルクの宗教的風土--その歴史的素描--」において歴史的に通観した。 6.滝沢克己と西田幾多郎・京都学派について:「戦時山口時代の滝沢について」という論文を発表している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 冨吉 建周: "「滝沢哲学」の成立--『現代哲学の課題』に即して--"現代哲学の課題(滝沢克己)(創言社)の解説. 225-243 (2004)
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[Publications] 中島 秀憲: "ヴュルテンベルク地方の宗教的風土--その歴史的素描--"九州産業大学国際文化学部紀要. 24号. 19-33 (2003)
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[Publications] 前田 保: "戦時山口時代の滝沢について"滝沢克己研究. 3号. 21-44 (2003)