2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520035
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水上 雅晴 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助手 (60261260)
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Keywords | 幕府 / 幕主 / 幕友 / 考証学 / 科挙 / 代作 / 学術情報の伝達 |
Research Abstract |
平成17年度までの考察を通して、幕主の学術上の事業を手助けすることによって生計を維持していた幕友の中には游幕中に自身の学術活動を進めた者もおり、そのような幕友は幕主が持っていた学術情報を活用していた、という事態の一端が明らかとなった。本年度はこの点に関する解明を深めることを主眼として研究を進めた。 研究期間に限りがあるので、考察の対象を清代において飛躍的な発展を遂げた金石学に定めた。内藤湖南が清代における金石学の重要な成果をいくつか挙げた後、「尤もこれらの著述は大部分その幕客の学者の手になつたもので、畢〓や院元その人の労力のみによつて出来たものでない」(『支那史学史』第12章「清朝の史学」)と述べているように、清代金石学の発展を支えたのが幕友であることは既に指摘されているのであるが、幕友が自身で金石学の研究を進める際、幕府にある関連資料や学術情報をどのように利用したかについては明らかになっていない。 そこでまず、孫星術(1753-1818)が清代において最大級の金石資料のコレクションを有していたことを実証し、次に孫氏の下で幕友として多くの学術活動を支えた厳可均が、746巻からなるその『全上古三代秦漢三国六朝文』において大量の金石資料を提示する上で、幕主たる孫氏が持っていた学術情報を最大限に活用したことを解明した。ここでいう学術情報は、金石資料のコレクションのみならず、幕主同士に交流によって利用が可能になった諸々の資料や情報を含む。 以上の考察は、主に論文「『全上古三代秦漢三国六朝文』の編纂と孫星衍幕府-幕主の金石資料とその交友関係を中心に-」において展開し、考察の結果、幕府における学術活動が幕主と幕友の双方にとって有益な面があったことが実証され、幕府の構成員、すなわち幕主と幕友の学術活動を支える意味での清代の幕府の学術機能がより一層、明らかとなった。
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Research Products
(1 results)