2004 Fiscal Year Annual Research Report
<大乗涅槃経>系三昧経典の研究-方等泥〓経を中心として-
Project/Area Number |
15520044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下田 正弘 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (50272448)
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Keywords | 如来蔵 / 仏性 / 大乗涅槃経 / 方等泥〓経 / 四童子三昧経 / Aryacaturdarakasamadhisutra / 経典形成過程 / 三昧 |
Research Abstract |
如来蔵・仏性思想を説き、大乗仏教思想形成の大きな核ともなった<大乗涅槃経>(以下涅槃経とも)は、あきらかになっているだけですくなくとも十数種類の経典の影響下に編纂されているが、そうした経典のなかでこれまでほとんど研究がなされてこなかったものに「三昧」という主題と関係する経典群がある。本研究ではそれらの経典のうち涅槃経と経典の主題とプロットの展開がかなりの程度かさなる『方等泥〓経』(二巻、西晋・竺法護訳)、その異訳である『四童子三昧経』(三巻、隋・闍那堀多訳)、および対応する西蔵訳(^*Aryacaturdarakasamadhisutra)を考察対象としてとりあげ、<大乗涅槃経>との比較研究のための基礎作業を行った。この二年にわたる研究期間において果たした作業の主要な成果は、(1)上述三者をもちいた批判校訂テクスト作成、および(2)経典形成過程の概観である。 このうち(1)校訂テクストはチベット訳北京版No.804,Du 152a7-192a3(デルゲ版No.136,Na144b2-179a4)トクパレス版、ナルタン版をもちいて行ったので、東西両系統のカンジュールを網羅したほぼ完全なものとなった。漢訳については大正新脩大蔵経をもちい脚注に異読を注記するかたちをとった。蔵漢の比較テクストは、分量が膨大であることもあり、漢訳との比較対照テクストは冒頭から三分の一程度の完成をした。今後も作業を継続し来年度に末には全体を公開できるようにする。 (2)についてはその成果を「聖なる書物のかなたへ」(『言語と身体-聖なるものの場と媒体-』(岩波講座・宗教五巻)として公表した。それによって個人的な体験が公共化されて口頭伝承体制が整い、やがて書写の出現によって仏教の聖典形成がおおきく変容される過程を、涅槃経の形成過程を基本にすえてあかすことができた。
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Research Products
(5 results)