2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和田 寿弘 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00201260)
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Keywords | 新ニヤーヤ学派 / ミーマーンサー学派 / パーニニ文法学派 / ガンゲーシャ / タットヴァ・チンターマニ / 定動詞接辞 / 普遍 / ウパーディ |
Research Abstract |
分析対象としている14世紀のガンゲーシャの『タットヴァ・チンターマニ』「言語論の章」「定動詞接辞の項」の全体にわたってみられる、語の意味を決定する原則の解明を行った。ガンゲーシャの時代には、意味確定の方法に「文法」「類比」「辞書」「信頼に足る人の言明」「言語使用」「補足文」「換言」という七手段が認められていた。17世紀のマトゥラーナータの時代には「意味の知られた語が近くにあること」を加えて八つを数えていた。17世紀の綱要書にもこの八種類が列挙されるので、広く新ニヤーヤ学派で受け入れられていたに違いない。今年度は、ガンゲーシャがこれらの手段で意味決定できない場合にどのような原理が働くと考えていたのか、を明らかにした。彼の立場は、特定の「語」の意味領域全体にわたって存在する性質(ダルマ)が普遍である場合、普遍でない場合つまりウパーディ(upadhi)である場合よりも理論的に簡潔であるというものである。11世紀のウダヤナは、意味領域とその全体に存在する性質とを結びつけるための概念としての「語の適用根拠」(pravrtti-nimitta)を用いていたが、ガンゲーシャが同様にしてこの概念を用いたかどうかは当該のテキストからは判明しなかった。17世紀の綱要書とその注釈書では、両者を結びつける概念として「被表示者性の制限者」(sakyata-avacchedaka)を用いるようになる。ガンゲーシャもこの概念を「言語論の章」の中の他の「項」で用いているので、知らなかったということはあり得ず、「語の適用根拠」か「被表示者性の制限者」かのいずれかを用いて意味を決定したと思われる。さらに、彼が意味を決定するときの要因として普遍を考慮する方が普遍以外を考慮するよりも簡潔であるとした理由は、意味確定の根拠を確実なものとするために新ニヤーヤ学派の認める存在論的範疇論で実在性の保証される普遍を選んだことによる、と結論づけた。
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Research Products
(1 results)