2003 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ精神科学における「自由」と政治〜戦間期・ナチズム・戦後
Project/Area Number |
15520065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 禎文 東北大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (20235675)
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Keywords | 戦間期ドイツ / 精神科学 / 自由 / 政治 / ボンヘッファー / 人間形成論 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、主に1930年代の精神諸科学的諸科学の位相を明らかにするために、精神諸科学と国家社会主義的諸科学および反ナチ抵抗運動に見られるさまざま思想との比較研究を行った。 精神諸科学は近代ドイツ思想の本質である人間の内面性、すなわち精神的自由の記述においては優れているものの、観念論の枠組みの中にとどまる。そして、現実政治との関わりにおいては無原則の態度決定を繰り返す。たとえば、シュプランガーやノールはナチ支配に対して迎合し、一方フリットナーは沈黙を守る。 これに対して、ナチ・ドイツの政治思想を前提とし、人間のトータルな掌握を目指す国家杜会主義的諸学は、精神科学的諸科学とは正反対の議論を展開する。たとえば、クリークは精神諸科学を否定、《純粋教育科学》あるいは《現象学的教育科学》を標榜し、国家社会主義という場の論理から《政治的》人間論を展開した。 また、反ナチ抵抗運動に見られる《人間再建》の思想は、ナチ的諸学と同様、人間をトータルに捉え直す試みである。しかしそれは、ナチ的諸学と異なり、その根底において宗教性を把持していた。たとえば、神学者であったボンヘッファーはナチの本質を正統的キリスト教に代替する疑似宗教と見なし、《キリストに従う》ことから人間の覚醒と国家秩序の再建を目指した。 以上のことから、1930年代における精神諸科学の特徴は以下のように理解するととができる。1.国家杜会主義的諸学と抵抗運動と比較して非政治的(社会科学的認識の欠如)である。2.宗教性に関しては、疑似宗教としてのナチ、また正統的キリスト教を内包する抵抗運動と比較して希薄(宗教性の欠如)である。
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Research Products
(1 results)