2004 Fiscal Year Annual Research Report
ティントレットの絵画と同時代出版文化の関係に関する研究
Project/Area Number |
15520081
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
越川 倫明 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (60178259)
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Keywords | ティントレット / アレティーノ / ヘームスケルク / 美術批評 / ロマニスト / 北方版画 / 聖書(俗語訳) / インクナブラ |
Research Abstract |
本研究課題に関わる平成16年度における実施事項は、(1)北方版画関連文献の収集、(2)ティントレット素描の画像データベース化(進行中)、(3)15年度に収集した16世紀俗語印刷本のマイクロフィルムの検討、(4)関連する論文の執筆・刊行、(5)関連する研究会の開催(平成16年12月)、であった。本研究の基本的な手続きと目標は、ティントレットの絵画作品と、同時代俗語出版物および同時代の版画イメージ(書籍挿絵を含む)との、これまで見過ごされてきた関係性を明らかにすることである。平成16年度においては、16世紀の北方版画家とイタリアとの関連に関する資料を収集・調査した。その成果としてヘームスケルクの素描・版画に関する研究発表を美術史学会全国大会(平成16年5月)にて行なうとともに、その内容を論文として東京芸術大学西洋美術史研究室紀要(日本語版)および英国のBurlington Magazine誌(英語版)に発表した。同じ研究方向では、ティントレットの絵画とドイツ・ルネサンス版画との関係に関する新知見を得ることができ、近く論文にまとめる予定である。インクナブラ(初期印刷本)との関連については、平成16年12月に、関連研究会「イタリア近世絵画研究と同時代印刷文化」を学外の専門家2名を招いて開催し、その際の発表においてティントレットと同時代俗語訳聖書の問題を論じた(その内容は平成17年度内に論文にする予定)。同時代の詩人・劇作家ピエトロ・アレティーノの美術批評がティントレットの絵画様式の形成に果たした重要な役割を具体的に示すための論文は、諸般の事情により刊行が遅れているが、すでに完全に校正を終え、平成17年度中に中央公論美術出版社から刊行予定である。また、本論文が収録される単行本「アレティーノ、または絵画問答」には、同時代の美術批評のキータームを示す約400項目の詳細な索引を作成し、同じく刊行を待つばかりである。
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Research Products
(4 results)