2004 Fiscal Year Annual Research Report
東欧の村の楽師たちと20世紀音楽の前衛:ロマ(ジプシー)とクレズマーを中心に
Project/Area Number |
15520088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊東 信宏 大阪大学, 文学研究科, 助教授 (20221773)
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Keywords | ロマ(ジプシー) / クレズマー / 中・東欧 / ブルガリア / チャルガ / シマノフスキ / リゲティ / ル・グラン・マカーブル |
Research Abstract |
本研究は、東欧やロシアの農村において、結婚式や葬式などの機会に器楽奏者として雇われ、舞曲などを提供してきたロマ(ジプシー)やクレズマー(東欧ユダヤ人社会の大衆音楽家)による音楽について、それを20世紀音楽史の総体の中に位置付け、その意義と影響を探ろうとするものである。 平成16年度においては、まずポーランドの作曲家シマノフスキとハンガリーの作曲家バルトークとの隠された関係について研究を進め、これをワルシャワにおいて英語で口頭発表した。また同時に、クラクフ(ポーランド)のユダヤ人街で、クレズマーたちによる音楽実践について調査を行い、資料の収集・整理を行った。 さらに、トランシルヴァニア(ルーマニア)出身のユダヤ系作曲家、Gy.リゲティの作品について詳細な検討を行い、その根底に本研究が対象とする民俗音楽との関連があること、あるいは民衆文化的、祝祭的感覚があることを確認した。これについては主に彼の唯一のオペラ作品である「ル・グラン・マカーブル」について、ベルリンでの上演も検証した。 そして、ブルガリアの大衆音楽について、現地からの情報をもとに論文を執筆し(ステラ・ジブコバとの共著)、学術誌に寄稿した(掲載決定済み、印刷中)。 またハルビン、上海、神戸などに移住したロシア系移民の音楽家についても、資料を収集中である。これについてはまだ準備段階だが、来年度にいくつかの現地調査を行いたいと考えている。 これらの研究によって、これまでとはかなり異なる地域、文化に属する素材を対象として取り込むことができ、本研究課題が目指す東欧的な拡がりの中で音楽現象を捉えることができるようになりつつある。
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Research Products
(3 results)