2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520126
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
真下 厚 立命館大学, 文学部, 教授 (50209425)
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Keywords | 万葉集 / 沖縄歌謡 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に行った奄美・沖縄における声の歌の生態について引き続き調査を行い、それを通して声の歌の一般的な生態を追究した。 7月、9月の2回にわたって宮古・八重山の島々で短詩型歌謡の調査を行った。宮古諸島ではトーガニ歌謡と歌い手との関わりを主に調査し、歌い手によるトーガニ習得の様相、歌い手の心とトーガニとの関わり、歌い手のトーガニ創作の様相などについてある程度解明した。また、八重山諸島ではトゥバラーマ歌謡や三線を伴奏とする節歌を調査した。とりわけ、トゥバラーマについてはその著名な歌い手を調査し、その人生史とトゥバラーマとの関わり、歌い手の創作する歌詞の特徴、そして地域に伝承されるそれとの異なりなどについて解明した。この歌い手は現代の文字社会のなかで声によって歌を生み出すが、そこに優れたことばの表現への自覚がはたらき、伝統的な歌詞との差異が生じる。こうした優れた歌い手の歌創作の問題は上代の和歌創作を解明する上で比較材料となる。 一方、『万葉集』の和歌の生態については、奄美島歌の歌い手の人生史における歌習得の過程を比較の材料とすることによって、歌人の和歌習得の過程を想定することができると考える。本年度は奈良時代に「風流侍従」と呼ばれた歌人たちについて考察を行い、その一人である桜井王の子息と考えられる大原今城を中心に考究することとした。「風流侍従」は奈良時代前期に歌舞・管弦唱歌に優れ、古歌舞の採集・整理・再開発を目的とする「歌舞所」の設立に働いてその初期の活動の中心となった歌人たちであるが、奈良時代中期の大原今城にはその才能が継承されたものと思われる。その経歴、作品、古歌の伝誦について基礎的研究を行ったが、今城の歌人的特徴である古歌伝誦について追究することが上代の歌人における和歌習得の過程を解明する一つのモデルになると考えるに至った。
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