2003 Fiscal Year Annual Research Report
オーストリア小説を中心とする20世紀ドイツ語散文の言説分析
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15520144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 研二 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (60114120)
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Keywords | ムージル / 言説分析 / フロイト / レーニン / ルカーチ / ゲーテ / 精神分析 / ラカン |
Research Abstract |
ムージル、カフカ、リルケ、ブロッホらをはじめとするオーストリアの小説家、さらにルカーチなどのヨーロッパ・マルクス主義の思想家、フランクフルト学派(アドルノ、ベンヤミン、ハーバーマスなど)およびフロイト、ラカンなどの思想家の一次文献二次文献の収集をった。 研究の成果としては、九州大学に提出し博士の学位を授与された、博士学位論文『物語と不在-19世紀オーストリア小説とムージル-』の8章、9章と最終章が本研究と関係する。そこでは、ムージルの散文作品を、マッハ、フッサール、ヴァイニンガー、フロイト、レーニン、ルカーチらの思想と比較し、マルクス主義と精神分析という20世紀の思想の流れの中で位置づけることを試みた。ムージルの創作活動の全体が、20世紀のドイツ語の散文として、マルクス主義と精神分析のはざまにおいて、もうひとつの別な言説を追及する試みであることを明らかにした。 次年度に発表予定であるが、日本ゲーテ協会の『ゲーテ年鑑』に、ゲーテのメルヒェン『新しいメルジーネ』をてがかりに、ゲーテの小説の特徴を明らかにするドイツ語論文を執筆した。これは、ラカンの思想を援用したという点で、本研究と間接的に関係する。ゲーテの多くのテキストが、テキストそれ自体の媒介者としての性格を前面に提示するものであり、その点にラカンの精神分析につながる面があることを指摘した。 また次年度東北大学出版会より刊行予定の『多元的文化の論理-新たな文化学の創生に向けて-』のために、このドイツ語論文をもとに、現代のゲーテ研究におけるフランス現代思想の影響とその意味について考察する論文を準備している。 本来発表を考えていたリルケの作品の分析については、上記の博士論文が、原稿用紙1000枚ほどの大きなものとなったため、準備するにとどまっている。
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[Publications] Kenji Hara: "Melusine order "die dritte Person".Zur Erzahlweise Goethes am Beispiel von Die Leiden des Jungen Werthers im Vergleich mit seinen spaten Erzahltexten"ゲーテ年鑑. 46. (2004)
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[Publications] 原 研二: "物語と不在 -19世紀オーストラリア小説とムージル-"原 研二. 289 (2003)