2004 Fiscal Year Annual Research Report
オーストリア小説を中心とする20世紀ドイツ語散文の言説分析
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15520144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 研二 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (60114120)
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Keywords | 言説分析 / ムージル / マルクス主義 / 精神分析 / フランクフルト学派 / ラカン / ゲーテ / オーストリア文学 |
Research Abstract |
20世紀のオーストリア小説家、およびドイツの思想家を中心に一次、二次文献の収集を行った。ムージル、ブロッホ、リルケらの作品における権力問題と言語表現の問題について検討し、あわせて20世紀における文学テキストとマルクス主義と精神分析の関係について調査を行った。また近代のドイツ語散文研究のひとつとして、小説のテキストと歴史家のテキストの比較検討を行った。 19世紀から20世紀のドイツ語散文の展開については、2003年日本独文学会秋季研究発表会で研究代表者が主催したシンポジウム「ディアスポラの文学」の参加者に依頼して、その時の成果を発展させて論文にまとめてもらい、この時期のドイツ語散文の変化を、フランス文学者、アメリカ文学者の協力の下に展望するかたちで『ディアスポラの文学』という論文集にまとめ、日本独文学会研究叢書の一つとして刊行した。 20世紀ドイツ語散文の言説分析の上で重要な、精神分析的なテキスト分析については、ゲーテのテキスト『新しいメルジーネ』を手がかりとして、ラカン的な視点からその作品を解釈する試みを、ドイツ語の論文としてまとめ、日本ゲーテ協会の『ゲーテ年鑑』に発表した。このラカン的な読解は、ゲーテの全長編に拡大して、別な日本語の論文としてまとめ、17年度に研究代表者が編集代表となる著書において発表予定である。 20世紀におけるマルクス主義の一つの展開としてのフランクフルト学派(とくにアドルノの思想)、またそれに対してこの研究のもうひとつの軸として設定しているラカンの精神分析との関連のなかで、文学的テキストの現代的な存在意義については、19世紀から20世紀にいたるさまざまなテキストにおいて検証し、とくにムージルについて考察を加えたが、さらに2004年度にノーベル文学賞を受賞したイェリネクなど、戦後の作家についても(グラス、M.ヴァルザーなど)検討を行った。
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