2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520147
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40151667)
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Keywords | ブレイク / 複合藝術 / 女 / ジェンダー / 十八世紀絵画 / 滋養 / 乳汁 / 乳房 |
Research Abstract |
2年目(最終年度)にあたる本年度においては、昨年度に考察した「乳汁」と「乳房」をめぐるディスコースが、ブレイクの作品のなかでどのように展開していったかを解明しようと努めた。 その結果、ブレイクが十八世紀に広まっていた「乳汁」の理論を用いながら、滋養を与える母というイメージを膨らませていくことを明らかにできた。 また、そのイメージと正反対といえる戦闘的な女のイメージも、乳汁・乳房をめぐって出現してくることを突き止めた。後者のイメージはブレイク独自のもので、彼の後期の作品に頻出することもわかった。そこにおいて、女は男に対抗する存在となり、そのジェンダー間の争いのなかで乳汁と乳房が女の拠りどころとして機能している。 じっさい後期のブレイク作品のなかで、男が支配的な精液(ブレイク作品の主要な体液のひとつで「支配の線維」とよばれる)を出してくるとき、それに対抗して女の乳汁(「乳の線維」ともよばれる)が出されるのである。乳汁が精液とおなじ白色をしていることを考えると、興味深い。 わたしはブレイク芸術を「絵」とみなし、その「絵」のなかに「詩」が書き込まれている、と理解している。ブレイク作品の視覚的な面を除外してはブレイク芸術を理解することはできない。したがって、ブレイク作品における乳汁と乳房の分析のためにブレイクの手稿やファクシミリ版を用いた。上記の考察をすすめるにあたって、十八世紀絵画の伝統のなかにブレイクを置き直したうえで、ブレイク作品に描かれた女の乳房の意味を再考する試みを行った。
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