2004 Fiscal Year Annual Research Report
マシャード・デ・アシスと夏目漱石〜対蹠地の同時代作家の近代化に対する共通意識
Project/Area Number |
15520158
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
武田 千香 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (20345317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 勝二 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (80206135)
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Keywords | マシャード・デ・アシス / 夏目漱石 / ブラジル文学 / 日本近代文学 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、マシャード・デ・アシスと夏目漱石の作品の寓意性に焦点を当てて研究を行い、11記載の論文を発表した。以下に要約を記す。 武田は、マシャード・デ・アシスの後期の長編小説群を対象として、そこに表われる近代化途上にあるブラジルに対するマシャードの批判的寓意を研究している。2004年度に執筆した論文では、『ブラス・クーバスの死後の回想』を取り上げ、そこにはヨーロッパから海を渡って伝わり、南米大陸の為政者たち虜にした帝国主義的思想や、自分たちがヨーロッパから受けた仕打ちであるはずの帝国主義をいつの間にか自己政策化して、南米大陸内で弱者叩きに転ずるブラジルが、主人公ブラス・クーバスを通して批判的に寓意化されていることを指摘した。 柴田は夏目漱石の初期三部作(『三四郎』『それから』『門』)を中心として、そこに込められている日本の近代化に対する漱石の批判的寓意を主に研究した。2004年度内に論文化したのは『三四郎』を論じたものだが、ここでは主人公の九州から東京への移動に前近代から近代への日本の以降が寓意化されると同時に、その移動--近代化が十分に達成されない様相が、「白」(近代、西洋)と「黒」(前近代的日本)を軸とする色彩の織物として現れている表現を検証した。『三四郎』では日本の帝国主義的進出の寓意は明瞭ではないが、それにつづく『それから』と『門』には、1910年におこなわれる日韓併合に向かう日本の動向が露わに映し出されている。それを次年度には明らかにする計画である。 今年度の研究からも、両作家とも19世紀の近代化に取り組むそれぞれの出身国を批判的に寓意化しており、テーマのうえでも小説の手法という点においても共通性がみられることがわかる。
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Research Products
(2 results)