2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520171
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中務 哲郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (50093282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 教授 (30188049)
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Keywords | 古代小説 / ヘレニズム文学 / クセノポン / ペリアンドロス / 空想旅行奇譚 / ウェルギリウス「アエネーイ / オウィディウス「変身物語」 |
Research Abstract |
本研究課題を進めるために中務は、初年度には古代ギリシア小説の起源に関わるさまざまな学説、すなわちオリエントやエジプトの物語に起源を持つとの説、秘儀宗教のテクストの隠された意味を散文化したものとの説、大セネカの仮想弁論起源説、等を検討した。16年度にはギリシア文学内部で古代小説と関わりのあるジャンル、すなわちヘレニズムの恋愛詩、空想旅行譚、とりわけクセノポンの『キュロスの教育』を考察した。17年度には、歴史というより伝奇的・小説的な筆致で描かれるペリアンドロスについて考察した。ペリアンドロスにまつわる伝承は豊穣神神話の変形との説(Stern)、神話モチーフや通過儀礼を反映するとの説(Sourvinou-Inwood)、オイディプス伝説の焼き直しとする説(Vernant)等を検討した上で、古代ギリシア人がペリアンドロスを小説的なヒーローにして様々な伝承を積み上げたと結論づけた。 17年度、高橋はとくにウェルギリウスとオウィディウスの詩作におけるギリシア神話の取り込み方をその技法的側面に力点を置いて検討した。そのうちウェルギリウス『アエネーイス』およびオウィディウス『変身物語』という二大叙事詩に関する成果は『ギリシア神話を学ぶ人のために』の中に発表した。他方、オウィディウス『名高き女たちの手紙』についても試訳の基礎作業を進めると同時に、神話を題材として、特定の場面で登場人物が思いを寄せる相手に宛てて記した手紙という同作品の設定が人物造形や物語構成にどのように生かされているか考察した。
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