2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520175
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津田 保夫 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (20236897)
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Keywords | 人間学 / ドイツ文学 / 18世紀 / 啓蒙主義 / 身体論 / 心身問題 / ドイツ思想史 / 生理学思想史 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き、18世紀ドイツの人間学関係の文献を収集し、とくにヴァイカルトによって発行された人間学雑誌『哲学的医師』(1773-1775)における人間考察の対象と手法を分析し、プラトナーの『医師と哲学者のための人間学』(1772)と比較して、それぞれの特徴を検討した。その結果、両者とも人間の心身交流問題を核としていながらも、前者はより経験的実践的な問題を中心的に扱っているのに対して、後者はより理論的な手法をとっているという相違点があることが解明された。 また、文学的人間学の問題が典型的に表われている作家シラーについて、その初期の医学論文『生理学の哲学』における心身問題の中心概念となる神経精気論の歴史的背景を調査し、シラーの説への影響について検討した。その結果、シラーの心身問題に関する考え方が、エラシストラトスやガレノスなどによる古代の三つの精気説からデカルトの動物精気説にいたる従来の理論を批判的に継承しながらも、アルブレヒト・フォン・ハラーらによる新しい神経理論をも取り入れて、中間力という概念の導入による独自の理論を展開しようと試みているけれども、結果的にはその試みが挫折していることを確認した。その後シラーはそのような思弁的な理論構築を放棄して、『人間の精神的本性と動物的本性との連関について』に見られるような、より経験的な人間考察へと転換していき、それによって得られた人間学的知見が、彼の同時期の文学作品『群盗』などにおける人物造形や重要なモチーフにも大きく影響していることがわかった。 さらに、ヘルダーの『人間の魂の認識と感受について』について引き続き検討し、そこでは認識と感受という方向性を異にする作用の相互の密接な関連性が示されていることがわかった。 来年度はとくに18世紀ドイツ文学における人間学の影響を、より広いコンテクストの中で捉え、研究のまとめを行いたい。
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