2003 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカ文学における身体意識の変容とメディアとの関係
Project/Area Number |
15520178
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
石割 隆喜 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (90314434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貴志 雅之 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (30195226)
渡辺 克昭 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (10182908)
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Keywords | クイア / 人種 / 歴史性 / 身体 / パフォーマンス / メディア / ピンチョン / ヘーゲル |
Research Abstract |
貴志雅之は、冷戦下アメリカの国家権力を照射する演劇的身体の表象性を中心にWilliamsとRabe作品の再検討作業を踏まえT.KushnerのAngels in Americaにおける主体・メディアとしてのクイア・ボディ・ポリティクスについて全国アメリカ演劇研究者会議第20回大会シンポジウムで発表した。また日系アメリカ演劇、20世紀初頭女性演劇について身体意識問題を包含した論考を共著2冊で発表した。さらに『英語青年』の現代アメリカ演劇最前線を伝える連載で、正史解体を要請する黒人の身体表象を具現化するSuzan-Lori ParksのFucking Aについて報告を発表した。渡邊克昭は、Don DeLilloのThe Body Artist、Mao II、Richard PowersのThree Farmers on Their Way to a Danceの三作品に焦点を絞り、現代アメリカ文学において、時間と主体の関係が、写真術、録音術、速度術、複製術といったメディアを巻き込んだ身体意識の変容といかに密接に関わっているかを具体的に検証した。その過程において、メディアの反復的な模倣の構造それ自体を可視化するパフォーマティヴィティが、同時性を脱構築し、撹乱的で境界侵犯的な主体変容をもたらすことが明らかになった。以上の成果を共著2冊と学会誌に発表した。石割隆喜は、Thomas PynchonのV.に焦点を当て、本作品での主体に関する重要なテーマであるパラノイアをヘーゲルとの関係という新たな角度から考察し直した。これにより、パラノイアという精神病理学的現象が「ヘーゲル主義」的であるが故にポストモダンと親和性をもち、従って作品における歴史感覚の喪失の主要因となっていることが、Louis Althusserの表出的因果性論やJoseph Frankの空間形式論との関連の中で明らかとなった。以上の成果を日本アメリカ文学会第42回全国大会で発表した。
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[Publications] 貴志, 雅之: "もう一つのスモールタウン..日系アメリカ演劇が映し出す『記憶の町』の妻たち"スモールタウン・アメリカ(大井浩二監修、英宝社). 280-309 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "グラスペルに見る反逆者/創造者としてのフェミニスト..エクリチュール・フェミニンは可能か"共和国の振り子..アメリカ文学のダイナミズム(大井浩二 監修、英宝社). 143-158 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "新千年期幕開けの英語圏演劇"英語青年(研究社). 第149巻1号. 40 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "Suzan-Lori Parksの新作、Fucking A"英語青年(研究社). 第149巻3号. 37 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "演劇史を読み直すQueer Readings"英語青年(研究社). 第149巻5号. 36 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "手話ミュージカルへの変身:新生Big River"英語青年(研究社). 第149巻7号. 37 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "Errol Hillの遺産:決定版『アフリカ系アメリカ演劇史』"英語青年(研究社). 第149巻9号. 36 (2003)
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[Publications] 貴志, 雅之: "Nilo Cruzのピュリッツァー受賞作:Anna in the Tropics"英語青年(研究社). 第149巻11号. 36 (2003)
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[Publications] 渡邊, 克昭: "メディア、ジェンダー、パフォマンス-The Body Artistにおける時と消滅の技法"身体、ジェンダー、エスニシティ..21世紀転換期アメリカ文学における主体(鴨川卓博・伊藤貞基共編、英宝社). 117-143 (2003)
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[Publications] 渡邊, 克昭: "フレームの彼岸から自伝の暗室へ..『舞踏会へ向かう三人の農夫』における死と複製のヴィジョン"共和国の振り子..アメリカ文学のダイナミズム(大井浩二 監修・英宝社). 177-194 (2003)
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[Publications] 渡邊, 克昭: "Welcome to the Imploded Future : Don DeLillo ' s Mao II Reconsidered in the Light of"The Japanese Journal of American Studies(日本アメリカ学会). 14. 69-85 (2003)
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[Publications] 石割, 隆喜: "ポストモダンを目撃するということ..「小説の死」再考"身体、ジェンダー、エスニシティ..21世紀転換期アメリカ文学における主体(鴨川卓博・伊藤貞基共編、英宝社). 31-59 (2003)
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[Publications] 貴志雅之ほか: "スモールタウン・アメリカ"英宝社. 319 (2003)
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[Publications] 貴志雅之, 渡邊克昭ほか: "共和国の振り子..アメリカ文学のダイナミズム"英宝社. v+386 (2003)
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[Publications] 渡邊克昭, 石割隆喜ほか: "身体、ジェンダー、エスニシティ..21世紀転換期アメリカ文学における主体(鴨川卓博・伊藤貞基共編、英宝社)"英宝社. vii+382 (2003)