2004 Fiscal Year Annual Research Report
中世から現代にいたるアイルランド文学における女性表象研究
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15520208
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
春木 孝子 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (80228668)
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Keywords | 哀歌 / 伝統 / アイルランド語詩 / 女性 / 現代のアイルランド小説 / 存在 / 独立国家 / Learning Irish |
Research Abstract |
前年度に引き続き、アイルランド語の現代女性詩人としてモーィラ・ヴァッカンツイーの詩作品を取り上げ、そのなかでも、特にアイルランド文化において女性の特権と言われる哀歌を対象として、伝統がどのように継承され、そして、どのように21世紀の現代を生きる女性のなかに発展を遂げているかを検証することを、前年度よりさらに中世のアイルランド語の詩を読み進めることで深めていった。その成果はまだ、印刷にまでいたっていないが、アイルランド研究会が、月1回行っている「アイルランド語の会」の16年度5月の例会で「伝統の継承と発展-モーィラ・ヴァッカンツイーの哀歌(その2)」として口頭発表する予定となっている。 現代の小説としても、引き続きリアム・オフラハティーの小説に描かれた女性を研究対象として作品を読み進めている。とくに本年度は、1924年から1937年という年代に書かれた生涯最良の6冊の小説を対象として研究を進めた。この年代は、1920年のホームルール修正法により北と南の二つに分断されたアイルランドにおいて、新しいアイルランドにおいて狭義の民族主義とカトリック的な着想により新しい文学作品を検閲にかけるようなどんよりとした空気のなかで、世紀末より盛り上がっていた「自由」「独立」「民族主義」などを支えたアイルランド文芸復興運動が、ひとつの区切りをつけた時代であった。文芸復興運動の作者たちによる女性表象と、その後の歴史を経験したオフラバティーの描く女性表象の流れも視野に入れた、女性表象研究を行った。 アイルランド語の文法書、ミホール・オシールのLearning Irishに関しては、本年度も従来からの月1回(1泊2旧の合宿を5回行ったことを含む)のペースを崩さずに着々と翻訳および解説を行ってきたことで、全36課の3分の1を第3校まで完成させた。
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