2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世から現代にいたるアイルランド文学における女性表象研究
Project/Area Number |
15520208
|
Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
春木 孝子 神戸松蔭女子学院大学, 教授 (80228668)
|
Keywords | 女性表象 / 哀歌 / 国家 / 歴史 / 理想 / 幻想 / 現実 / アイルランド語 |
Research Abstract |
平成十五年度に研究の緒をつけたモーィラ・ヴッカンツィーの哀歌において、本年度は特に、伝統の継承という側面からは、表現媒体としてケリー地方のアイルランド語を選んでいる詩人の思い、そして、偉大な伝統の体現者であった17世紀の同じ地方出身の詩人ピアラス・フェリチェールの内面と詩形式上の影響を中心に据えた研究を行った。また、そういう伝統を継承しながらも、個人的感情を交えて慣習を批判し、個人を越えた国の行く先を見据える力を感じさせた発展的な二つの詩を詩集『今まで』(1987)の中から、焦点を当てて分析を行い、困難な時代である現代の我々に大きな示唆を与える点を評価して、『伝統の継承と発展-モーィラ・ヴァッカンツィーの哀歌(その2)』と題する論文にまとめて、2006年3月に神戸松蔭女子学院大学の紀要に発表した。 上記よりもさらに女性表象に的を絞って、平成十五年度に足がかりをつけたリアム・オフラハティーの小説作品の研究を進めて論文とし研究成果報告書としたものが、『リアム・オフラハティーの女性表象-男の幻想と女の現実のはざまで』である。建国という歴史の流れのなかで、アイルランドという国を女性として象徴的に捉える文学の伝統と現実のはざまで、進む道を失った人々、建国の情熱を向けるべき方向性を失った人々など、男側からと女側からの別々の視点の交錯する有様を、リアム・オフラハティーの最良の6冊の小説において女性表象という観点から論じた。 さらに、本年度は、ミホール・オシールのアイルランド語の文法書Learning Irishの解説を含んだ翻訳を完成させて、科学研究報告書として研究会のメンバーとともにまとめた。
|
Research Products
(3 results)