2003 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代台湾文学における日本プロレタリア文学の影響
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15520216
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
四方田 千恵 (垂水 千恵) 横浜国立大学, 留学生センター, 教授 (70251775)
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Keywords | 台湾新文学 / 日本プロレタリア文学 / モダニズム / カフェ / ナルプ / 文学評論 / 大衆文学 / 呂赫若 |
Research Abstract |
主に1932年当時、台湾新文学運動における大きな論点の一つであった文芸大衆化の問題に注目し、研究を行った。特にカフェという視点を用意することで、30年代の台湾文学および日本文学におけるモダニズムとプロレタリア文学運動の通底する関係を中心に考察した。台湾文学側では『台湾大衆文学系列』の諸作品、さらには『台湾文芸』『台湾新文学』といった雑誌掲載の台湾新文学作品を中心に調査を進めた。結果、これまで典型的な大衆文学とされてきた林輝焜の「争へぬ運命」に、日本プロレタリア文学の影響を認めるに至った。さらに、これまで左翼文学として評価されてきた王詩琅の作品は、小林多喜一、佐多稲子といった日本プロレタリア文学作家の作品と比較した場合、モダニズムの受容、女性読者のリテラシー等の理解において、かなりの限界を見せていることが判明した。 台湾新文学運動が日本プロレタリア文学運動の影響を受け、文芸大衆化を問題としながらも成功を収めることのできなかった一因が解明できたと言えよう。 また、さらにはナルプ解散を挟んで、日本プロレタリア文学運動の方針が如何に変化していくか、またそれが台湾人作家にどのように受容されていったかを知るため、『文学評論』誌に注目、掲載論文の分析を進めた。 一方、台湾に調査に赴き最新の研究資料を収集すると同時に、中央研究院・彭小妍教授、国立清華大学台湾文学研究所・柳書琴教授と研究交流を行った。また作家呂赫若の遺族(次男・呂芳雄氏)にも会い、関係資料を入手した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 垂水千恵: "<借り物>の言語を駆使して-台湾の日本語文学から考える-"日本文学. 52巻4号. 41-47 (2003)
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[Publications] 垂水千恵: "東京/台北:カフェを通して見るプロレタリア文学とモダニズム"横浜国立大学留学生センター紀要. 11号. 87-96 (2004)
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[Publications] 垂水千恵他, 中山昭彦他編: "文学の闇/近代の「沈黙」"世織書房. 446 (2003)