2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代から現代における中国語語彙の変遷と社会的変化の関連性-北京語を基軸として-
Project/Area Number |
15520247
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤田 益子 新潟大学, 留学生センター, 助教授 (10284621)
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Keywords | 現代北京語 / 近代漢語 / 語彙変遷 / 社会的背景 / 方言 / 官話 / 現地調査 / コーパス |
Research Abstract |
近現代の中国語は、漢語の規範化による普通話の普及や、社会体制の変革、方言の流動、文化的変貌等により、非常に複雑で変化の激しい環境におかれている。そこで、本研究では「社会的背景と語彙変化の関連性の考察」を目的とし、北京語を基軸として近代から現代への中国語の語彙の変遷を辿り、変化とその要因との関係を調査研究する。具体的には、一.現代北京語、二.近代北京語、三.方言、四.社会と文化背景の四つの方向からアプローチを試みる。これら四つの観点から、語彙、文法用法のデータを収集し、同一語義や機能が、時代によって、どのような語彙や用法に変化していくのかという、北京語の歴史的変遷の傾向を、時間、地理、社会体制、文化などの多角的な方面から考察し、具体的な検証を進める。 今年度は、清末から現代における北京語を収集・調査し、北京語語彙変遷研究のための基盤を整理することを目標とした。現地調査と文献資料の両面から、語彙や語義の調査、整理を行い、現代までの約百年間の北京語の収集と変化の把握に努めた。実際には、(1)現代語の現状はインフォーマントによる現地調査を中心に記録する、(2)文献としては老舎などの北京人による作品から北京語を選定する、という作業を通して、a.純粋な北京語の収集、b.収集語彙数の拡充による研究基礎資料の充実、c.北京語に見られる特殊な文法用法の調査整理等を行った。 また、次年度以降、歴史、方言、社会体制という三次元的な発想から研究を多角的に深めるため、平成17年度は官話方言調査を予定していた。しかし、今年度、「西南官話に関する各年齢層における変化の調査」を目的とした日中合同方言調査が組織されたことを受け、個人規模で行うよりもより系統的なデータを収集することが出来る点や、個人では実施しにくい地域での調査が可能となる利点を考慮し、予定を繰り上げて方言調査を行った。更に、清代北京語資料として頻繁に使用する『児女英雄傳』の定本を選定するため、上海図書館において版本調査も行い資料としてまとめた。また、これらを基にしたコーパスの作成にも着手した。これは、漢語史研究における正確な北京語資料を作成するための作業であり、その成果は、第二段階の近代北京語研究、北方方言の研究に繋がるものである。
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Research Products
(2 results)