2004 Fiscal Year Annual Research Report
南スラヴ語史の考察-14-15世紀の言語とその文化史的背景を中心に
Project/Area Number |
15520251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 恵子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (10229726)
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Keywords | ドゥブロヴニク / 中世ボスニア / 中世セルビア / チャ方言 / シト方言 / *eの反映形 |
Research Abstract |
今年度は昨年度の研究をふまえ、(1)中世ボスニア王国の言語文化のあり方とそこで作られたテクストに見られる言語特徴を明らかにする、(2)ツルナゴーラ(モンテネグロ)における言語文化の伝統がどのようなものであったかを明らかにする、という二つの目標を掲げた。(1)については、12世紀はじめから15世紀までのボスニアの統治者たちが残した憲章,法令集を分析し、その言語特徴からこの時代にこれらの文献が作成された地域で形成され始めた方言的特徴の一端を明らかにした。また中世ボスニア、セルビア王国と、アドリア海の海運共和国ドゥブロヴニクとの歴史的関係についても考察した。これらの成果は「ドゥブロヴニクと中世バルカン世界。ストンの買収をめぐる歴史と文献への考察」(デュナミス8号)としてまとめ発表した。また(2)についてはバルカン半島で最初に活字印刷が行われたツルナゴーラのツェティニエで印刷された『詩編』の言語分析に着手しはじめた。ツェティニエの印刷物はいわゆるincunabulaに属するもので、その内容の詳細な検討とツェティニエを中心に形成された独自の文化、またこの地域とボスニア、セルビアなどの南スラヴ諸地域の言語文化との関わりについて、目下さらに調査を続行中である。
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