2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520252
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
藪 司郎 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (30014509)
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Keywords | 古ビルマ語(OB) / 綴り字法 / OB:WrB(ビルマ文語)の対応 / 有声頭子音(voiced initial) / 音型(sound pattern) / 梵巴借用語 / 碑文 / 墨文 |
Research Abstract |
古ビルマ語(OB)は11-13世紀に記録されたビルマのパガン期のビルマ語碑文(kyokcaa)とビルマ語墨文(mangcaa)に代表される言語である。 当然のことながら、OBは、その語形・語法・意味において,現代ビルマ文語(WrB)から多かれ少なかれ隔たっていることは、すでに指摘されている。(例)-ra kaa「〜シテ」WrB.「〜ノデ」、-ruy' e'「〜シテ」WrB.(なし)、nui'cui'「幼児」WrB.「乳児」、ngii「弟」WrB.nyii、miy ma「女」WrB.min:ma。 本研究において、さらに、次のような点が明らかになった。 (1)古ビルマ語には当時の口語を記したことを窺わせる例も少なくない。(例)hi〜hiy'「ある・いる」WrB. hri-,Ark(Arakanese dialect)hi-(正確にはci-)、siy'-<?siy e'「死んだ」(文末助詞と融合)、kywan many mhat「奴隷名一覧」(略記。奴隷の名前を記すと[次のとおり]の意)、sang krii「集団の長」(略記)、satthaa-「信仰する」Pali saddhaa(音節連続における音型が、当時、すでに現代と同じであったことがわかる。chamii「灯明」WrB.chiimiiまえの音節の弱化をそのまま記したもの。 (2)綴り字からOBの音韻と音型を推定することができる。OBには有声音の子音字の使用が少ない。梵巴借用語、とりわけ人名など固有名詞、には有声子音字が見られる。梵巴借用語でも、ビルマ語化した日常的な語彙においては、上の例のように有声子音字で書かれていない例もある。また、K行子音に母音iがつづくOBの一連の語が、WrBにおいて介子音-y-をもつ点も、ビルマ語の音型の変遷を考えるうえで興味深い事実である。(例)kip「十」WrB.kyip、khin「重さを測る」WrB.khyin、ngii「弟」WrB.nyii(ngy=ny)。
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Research Products
(1 results)