2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520270
|
Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
池内 正幸 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (20105381)
|
Keywords | 極小主義 / 進化 / 社会生物学 / 適応 / 自己組織化 |
Research Abstract |
言語の起源・進化については次のような成果を得た。言語は例えば(1)のような曖昧な表現を産出するシステムである。 (1)The chicken is ready to eat. その意味において言語は完全には適応的ではないと考えられる。ところが、社会生物学によれば、「言語機能が自然淘汰によって生じた産物であるとしても、それが全面的に適応的であるとは限らない」という主張になる。完全に適応的であるならば、伝達に障害となるような曖昧な文(1)を産出するような仕組みになっていないはずである。しかし、現在の言語の仕組みにはそれを補って余りある利点が何かあるはずだと考える。その仮説が出されたところでそれを検証するということになる。もしそれができなければ、非適応論的代替仮説を提出する。それらの仮説が出されるまでは、したがって、社会生物学の言語の起源・進化についての立場は検証不可能あるいは反証不可能であると考えられる。また、自然淘汰が作用する個体間の遺伝的変異はもっぱら突然変異によってもたらされると考えられているが、突然変異の替わりに自己組織化(self-organization)によって最初の変異が顕われ、それに淘汰が働くと考えることが可能である。 さらに、自己組織化と言語獲得の問題について、Culicover and Nowak(2003)、Hohenberger(2002)を取り上げて検討した。これらの研究は、process重視と言いながらやはり出力としての成人文法が決まっているものとして、そこに辿り着くように初期条件を設定しているという特徴がある。自己組織化という考え方を持ち込むのであればこれはあり得ない。また、途中の段階についてはおのずと何も言えない。その点でKajitaの動的アプローチの視点が重要であることを指摘した。
|