2003 Fiscal Year Annual Research Report
「思想」としての正書法問題-ドイツ語史における規範議論:1700〜1850年-
Project/Area Number |
15520275
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高田 博行 関西大学, 文学部, 教授 (80127331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 美規 富山大学, 人文学部, 助教授 (60324026)
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Keywords | ドイツ語史 / 正書法 / 言語規範 / 言語思想 / 正書法改革 / コーパス言語学 |
Research Abstract |
18世紀から19世紀後半に至るまでのドイツ語正書法の歴史を大きく概観することによって、正書法議論においては次のような「思想」的問題が複合的に関係していることが明らかとなった: 1)「上意下達の思想」、2)「言語文化の思想」、3)「経済の思想」、4)「宗教(的敬虔)の思想」、5)「愛国主義の思想」、6)「言語的整合性の思想」、7)「慣用性の思想」。目下のところは、これらの7項目に関して1700年から1775年までの時期について、とりわけHieronymus Freyer(1728)およびJohannes Christoph Gottsched(1749)の正書法に関する原理的発言を吟味することにより、詳細な分析を試みているところである。 1775年から1850年の期間については、この時期を代表する文法家アーデルングの主要な原著文典3点にあたり、特にいわゆる分離動詞の綴り方に関する規則をまとめ、あわせてこの文法家の規則と同時代の文筆家の綴り方の実態とが一致するか否かを調査した。すでに機械可読のコーパスが存在する文筆家の一名について仮調査したところ、1)両者は必ずしも一致するわけではないこと、2)しかし規則と実際の綴られ方の一致・不一致は、まったく任意に起こっているのではなく、特定の要因に基づいて書き分けが行われている可能性があること、の二つの成果を得た。次年度は、他の正書法規則、他の文筆家に関しても、既存のコーパスのみならず、阿部の作成したコーパス(現在作成中)をも用いた調査によらて、より広範な土台を得た上で今年度の仮調査結果を吟味・補完することを目標とする。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hiroyuki Takada: ""Vertrauliche Sprechart" im sprachlichen Alltag um 1800. Soziopragmatische Uberlegungen anhand der lexikographischen Beschreibungen von Adelung."Klaus J. Mattheier/ Haruo Nitta (Hrsg.) Sprachwandel und Gesellschaftswandel ‥ Wurzeln des heutigen Deutsch.Munchen : iudicium.. 263-277 (2004)
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[Publications] 高田博行: "ドイツ語辞典における心態詞の記述史-伝統のなかの改新-"ドイツ語学の諸相、河崎靖ほか編、郁文堂. 141-156 (2004)
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[Publications] 高田博行: "言語文化研究-時空を行きつ戻りつ縫うように-"日本の視点からゲルマニスティクの新しいパラダイムを探る(日本独文学会研究叢書)、松田和夫編. (印刷中). (2004)
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[Publications] 阿部 美規: "いわゆる分離動詞の綴り方について-アーデルングの正書法とゲーテの書法との比較"いわゆる「分離動詞」をめぐって(日本独文学会研究叢書). 55-70 (2003)
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[Publications] 阿部 美規: "16-18世紀における主文の枠構造。社会語用論的分析の可能性"ドイツ語学の諸相(河崎靖ほか編)(郁文堂). 159-176 (2004)
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[Publications] 阿部 美規: "文学テクストと語順-レッシング,ゲーテ,シラーの3項述語の場合-"Neue Beitrage zur Germanistik(日本独文学会編). Band2/5. 58-70 (2003)